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新規事業や新サービスの立ち上げにおいて、社内リソースだけではシステム開発に対応できないという状況はよくあります。このような場合、外部の業者にアウトソースすることで開発スピードを上げ、市場投入までの時間を大幅に短縮できます。
しかし、システム開発の外注には大きなリスクが伴います。管理が適切でないプロジェクトは、品質の低下、納期遅延、そして予算オーバーといった問題を引き起こす可能性があります。
発注者としての責任を明確に理解し、適切に対処することがプロジェクトの成功の鍵となります。
この記事では、システム開発を外注する際のリスクを最小限に抑えるために、発注者が果たすべき重要な責任について詳しく解説します。
Rabilooのブログ編集部が、数多くの開発プロジェクトに携わってきた知見をもとにプロジェクトを成功に導くための具体的なステップをご紹介します。信頼のできる開発外注先の選定にお役立ていただければ幸いです。
発注者にシステム開発に関する専門的な知見がない場合、プロジェクトの全工程を外部の業者にアウトソースすることになります。
発注する側からすれば、開発に関することはわからないので、ほとんどの決定や実行を専門家であるベンダーに全部任せたくなります。この状態を「丸投げ」と言います。この方法は一見効率的に見えるかもしれませんが、リスクとデメリットが伴います。
システム開発外注を丸投げしてしまっている状況には、以下のようなものがあります。
プロジェクトの初期段階で、具体的な要件定義を自社で十分に行わず、曖昧な指示だけで外注先に依頼するという状況があります。これにより、ベンダーが詳細な仕様を決定することになり、具体的な指示がない部分に関しては、要件定義の通りに開発を進めることになります。結果として「思っていたのとは違う」成果物が納品されるリスクが高まります。
内部での技術的な知識や経験不足により、詳細な要件をまとめるのが難しいため、このような問題が生じます。
外注先に依頼した後、プロジェクトの進捗確認を怠り、定期的なレビューやミーティングを行わないことも「丸投げ」にあたります。これにより、外注先がどのように進行しているか把握できず、問題が発生しても気づくのが遅れる可能性があります。
開発の各段階での成果物に対して、自社からのフィードバックを行わず、外注先の判断に全てを任せるのも「丸投げ」です。これにより、最終的な成果物が自社の期待と異なるものになるリスクがあります。
プロジェクトに関連するリスクの評価や対応策の計画を外注先に任せ、自社ではそのプロセスに関与しないのも問題です。これは、外注先がリスクに適切に対応できない場合にプロジェクト全体が遅延や失敗するリスクを増大させます。
単に完成品が出来上がるのを待つだけで、プロジェクトの進行中に発生する問題解決や改善提案に積極的に関与しない姿勢は危険です。この受け身の態度は、最終的な成果物の品質や機能に対するコントロールを失うリスクを伴います。プロジェクトの成功には、継続的なコミュニケーションとフィードバックの提供が不可欠であり、開発の各段階での積極的な関与が必要です。これにより、プロジェクトが軌道修正を必要とする場合にも迅速に対応でき、高品質な成果物の実現が期待できます。
もちろん、システム開発を外注すること自体には多くのメリットがあります。特にリソース不足により開発を内製化できない企業にとっては、良い開発パートナーを得ることはビジネスを成長させるために欠かせないことです。
システム開発外注のメリットは以下の通りです。
外部の専門家を活用することで、高度な技術や最新のトレンドを迅速に取り入れることができる
外注することで、エンジニアの雇用や教育、必要な知識のアップデート、開発環境の構築といったコストや労力をかけずにシステム開発を進めることができる
外部パートナーとの協力により、リソースを柔軟に調整でき、プロジェクトのスケールアップやスケールダウンが容易になる
結果として、外注により自社のリソースをコアビジネスに集中させることができるため、全体的な業務効率が向上します。
このように、自社に開発リソースのない企業にとって、システム開発を外注することが唯一の選択肢となる場合が多いのが現状です。開発の部分はお任せするとしても、プロジェクトの全てを決して丸投げしてはなりません。
開発プロジェクトを全部丸投げしてしまうと、発注者側はプロジェクトにほとんど関与しないため、品質管理や進捗管理が難しくなり、結果として期待通りのシステムが完成しないリスクが高まるため危険です。
システム開発の丸投げにより企業は以下のような被害を被ることがあります。
丸投げの結果、要件定義が曖昧なまま開発が始まり、蓋をあげると期待とは異なる成果物が納品されるリスクが高まります。
また、進捗確認を怠ると問題の早期発見が遅れ、プロジェクトの遅延や品質の低下を招きます。
これらの要因が重なることで、プロジェクトの失敗につながります。
要件定義が不十分で、フィードバックが不足した状態で開発を進めると、手戻りと要件の追加に多額の追加費用が発生します。これによりプロジェクトは予算をオーバーし、コストが増大します。
またリリースが遅れることで機会損失が生じ、結果として、企業は経済的なダメージを被ります。
リスク管理をベンダーに任せっきりにすると、予期しないトラブルが発生し、その対応に多くの人的リソースが消費されます。
これにより他のプロジェクトや業務に支障が出る可能性が高まり、重要なプロジェクトにリソースを割けなくなります。トラブルの処理に多くの時間が費やされることで、生産性が低下し、結果として社内リソースが浪費されます。
丸投げに起因するシステムの失敗や問題が頻発すると、社員のモチベーションが低下します。これにより生産性が落ち、離職率が上がる可能性があります。プロジェクトの失敗が続くと、チーム内の信頼関係が損なわれ、協力が難しくなります。結果として、社員のモチベーションの低下が企業全体に悪影響を及ぼします。
このように、システム開発を外注業者に丸投げすると、プロジェクトの失敗、経済的損失、社内リソースの浪費、社員のモチベーション低下といった被害が生じます。適切な対策を講じ、外注先と密に連携することで、これらのリスクを軽減し、プロジェクトの成功率を高めることが重要です。
関連記事:システム開発プロジェクトでありがちな失敗の原因と対策
システム開発の専門知識がない企業がシステム開発を依頼する際、失敗を防ぐために以下の点に注意することが重要です。
まず、なぜシステム開発を行うのか、どのような目的を達成したいのかを明確にする必要があります。目的がなければ、適切なシステムを開発することはできません。
具体的な目標を設定することで、必要な機能や開発スケジュールを明確にすることができます。
システムの利用目的: システムを導入する理由を具体的に定義します。例えば、「業務プロセスの効率化」「顧客管理の強化」「売上データのリアルタイム分析」など
目標の設定: 目的を達成するための具体的な目標を定めます。例えば、「月に20時間の業務時間短縮」「顧客満足度の向上」など
システム開発で最も重要なのが、要件定義です。
要件定義とは、システムで何を、どのように実現したいのかを詳細に記述することです。
要件定義が曖昧だと、開発途中で仕様変更が発生したり、思っていたシステムと違うものが出来上がってしまう可能性があります。システム開発外注の失敗の原因の多くは、要件定義が明確にできていなかったことに起因していると言っても過言ではありません。
要件を具体的に記述する必要があります。
必要な機能: システムで実現したい具体的な機能をリストアップします。例えば、「顧客情報の登録・管理」「売上レポートの自動生成」など。さらに優先順位を定めて「要らないものは追加しない」などの線引きができいる必要があります。
動作仕様: 各機能がどのように動作するかを詳細に記述します。例えば、「顧客情報はCSVファイルからインポート可能」など。
その他の要件: デザイン、性能、セキュリティ、運用方法についても明確にします。
複数社から見積もりを取って比較するようにしてください。
見積もりを取る際には、以下の点に注意します。
同じ条件で見積もりを取る: 全てのベンダーに対して同じ要件定義を基に見積もりを依頼します。
不明点は質問する: 見積もりに疑問がある場合、積極的に質問し、内容を明確にします。
提案内容・実績・担当者の経験を考慮: 価格だけでなく、提案内容の質やベンダーの過去の実績、担当者の経験も評価します。
信頼できるベンダーの選び方
過去のシステム開発実績: 具体的なプロジェクトの成功例やクライアントの評価を確認します。
顧客満足度: 他のクライアントからのフィードバックやレビューを参考にします。
経営状況: ベンダーの財務状況や企業の安定性も重要な判断基準です。
担当者の対応: 初期のやり取りでの担当者の対応やコミュニケーション能力も評価ポイントです。それが今後のプロジェクトでの対応になっていくからです。
システム開発中は、発注側と受注側が密にコミュニケーションを取ることが重要です。進捗状況や問題点などを共有することで、迅速な意思決定が可能になります。
開発チームが「今何をやっているのか」を、可視化することによって透明性を確保できます。
コミュニケーションの方法
定期的なミーティング: 進捗状況や問題点を共有するための定期ミーティングを設定します(例: 週1回の進捗会議)。
連絡ツールの活用: Slack、Teams、Zoomなどのツールを利用して、迅速かつ効率的なコミュニケーションを図ります。必ずドキュメントやログを残して後で追跡できるようにします。
進捗報告: ベンダーに定期的な進捗報告を求め、透明性を確保します。報告書には、進捗状況、完了タスク、今後の予定、発生した問題などを記載してもらいます。
フィードバックの提供: ベンダーからの提案や進捗報告に対して、迅速かつ具体的なフィードバックを提供します。これにより、コミュニケーションを円滑にし、問題の早期解決が可能になります。
契約書には、開発スケジュール、費用、守秘義務などについて明確に記載する必要があります。
口頭での約束はトラブルのもとになるので、必ず書面で残しておくことが大切です。
契約書に含めるべき内容
開発スケジュール: 各段階の納期を明確にします。
費用: 総費用と支払いスケジュールを明記します。
守秘義務: 情報漏洩防止のための守秘義務条項を追加します。
書面での約束: 口頭での合意事項も全て契約書に書面で残します。
契約書には、開発範囲(スコープ)、納期、費用、支払い条件、修正回数、保守・サポート内容などを詳細に記載します。また、途中での要件変更が発生した場合の対応方法を明確にしておきます。追加費用や納期延長の取り決めを事前にしておくと良いでしょう。
システム開発には、様々なリスクが伴います。
スケジュール遅延、費用超過、品質問題など、想定外の事態が発生する可能性があります。
事前にリスクを洗い出し、対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。
リスクアセスメント: プロジェクト開始前にリスクアセスメントを行い、潜在的なリスクを特定します。技術的リスク、スケジュールリスク、人的リスクなどを洗い出します。
リスク対策の計画: 各リスクに対する対策を事前に計画しておきます。例えば、予備の予算やスケジュールの設定、代替策の準備などです。
システム開発は、会社全体で取り組むプロジェクトです。
関係者全員がプロジェクトの目的や重要性を理解し、協力することが重要です。
経営層やシステム利用者に対して、説明会を開催するなど、情報共有を徹底しましょう。
とりわけプロジェクトオーナーを立て、味方につけることが重要です。予算がオーバーしそうになった場合は、プロジェクトオーナーが経営のために必要な判断を下せるようなプロジェクト体制を整えておくことが極めて肝要です。
関連記事:【プロジェクトオーナー】とは?その役割が機能を果たすためにすべきこと
システム開発は、納品で終わりではありません。
納品後も、保守・運用が必要となります。
保守・運用の費用についても、事前に見積もりを取る必要があります。
保守契約: システム納品後の保守・サポート内容を明確にし、契約に盛り込みます。
運用マニュアル: システムの運用方法についてのマニュアルを作成し、社員がスムーズに運用できるようにします。
システム開発を外注する際には、ベンダーに丸投げするのは非常に危険です。成功の鍵は、目的と目標を明確にし、詳細な要件定義を行うことから始まります。複数のベンダーから見積もりを取り、信頼できるパートナーを選びましょう。
プロジェクト管理では、定期的なコミュニケーションを保ち、専門知識を持つ担当者を立てることが重要です。契約内容を明確にし、リスク管理を行うことで、予期せぬトラブルを最小限に抑えることができます。システム納品後の保守・運用も見据えて、しっかりと計画を立てましょう。
最後に、関係者全員の理解と協力を得ることで、プロジェクトの成功に向けた基盤を築くことができます。慎重な準備と継続的な管理を通じて、システム開発外注を成功させましょう。
Rabiloo(ラビロー)はベトナムのグローバルテクノロジー企業です。透明性のある徹底した品質管理を行い、高品質なソフトウェア開発サービスを提供しています。
超上流工程から対応可能で、長期にわたって企業の信頼できるパートナーとして多くのクライアントのプロジェクトを成功させてきました。
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