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ベトナムでは今でも、中国の春節と同じ時期に旧正月が祝われています。
日本ではとっくにお正月を迎え、すっかり平常運転に入った1月〜2月ごろ、ベトナムでは新年を迎えます。
なのでベトナムに住んでいると、「え、今から年末?」と、毎年ちょっと不思議な感覚を味わいます。
そこでこの記事では、ハノイ在住の筆者が、日本人が意外とよく知らないベトナムの旧正月・テトについてご紹介したいと思います。
ベトナムの旧正月のことを「テト」といいます。旧正月はベトナム語で書くと Tết Nguyên Đán となり、tết は漢字では「節」という意味です。
カタカナで書くと「テト」ですが、ベトナム人はこれを「テッ」と発音します。
テトは旧暦で数えるため、毎年日付が変わり、だいたい1月か2月の中旬ぐらいに新年を迎えます。
ベトナムの労働法ではテト休暇は5連休と決められているため、前後の土日をつけて、だいたいその前後10日間ぐらいがテト休みになります。
この日付も毎年、政府が話し合って決定します。
そんな2024年のテト(元旦)は2月10日(土)になります。
政府官公庁はいくつかの案の中から、2024年のテト休みを2024年2月8日(木)から2024年2月14日(水)までの7連休に決定しました。
ほとんどの会社はこの予定に合わせてテト休暇に入ります。
ベトナムでは祝日が少ないため、ベトナム人にとってテトは貴重な長期休暇です。
テトになるとベトナムの全商店・会社が休みになり、国中が特別な雰囲気に包まれ、労働者は一斉に故郷へ帰ります。
西暦のお正月、いわゆる日本のお正月、1月1日はベトナムではなんと単発の祝日扱いになります。
年によって、元旦が週末にかかると翌日の月曜日が代休になります。
ここが、ベトナム在住の日本人にとって寂しいところで、大晦日もほぼ平日モードで動くため、年越しの雰囲気が全くありません。
気がついたら普通に年が変わっているという感覚です。
お正月気分を味わうことなく、2日か3日には仕事開始です。ベトナム人にとって西暦の正月は重要ではなく、あくまでもメインは「テト」です。
弊社ラビローのベトナム人スタッフにテトに行う習慣について聞きました。
地域や家族によって違いはありますが、今でもこのような風習が守られているそうです。
ベトナムの一般的な年末年始の行事は以下の通りです。
旧暦
12月23日(24日とも) 台所の掃除をして竈の神を送ります。
12月28日〜29日 大掃除 笹巻きを包む、食べ物の購入、食べ物の準備、飾り物の購入、飾り付け
12月30日 大晦日 ご先祖にお参り・お供え
1月1日 お寺にお参り 父方の親戚と食事
1月2日 母方の親戚と食事
1月3日 家族がそれぞれ自由に近所の知り合い友達を訪問
1月4日 友達と遊びに行く
ベトナムでは、桃の花や、金柑の木を飾ります。
まるでクリスマスツリーのように、電飾をつけてにぎやかに飾りつける家庭もあります。
テトが近づくと、桃の木や金柑の鉢植えの路上市場があちこちで賑わい、バイクの後ろに器用に載せて運ぶ光景がこの時期の風物詩になっています。
かつては、年越しの瞬間に爆竹を鳴らすことが習慣でありましたが、今では法律で禁じられています。(それでも毎年どこかしらか聞こえてくるのですが)
各都市では年越しの瞬間に花火が打ち上げられ、それを大勢の人が見に集まり、その流れで初詣に行く若者や家族も多いです。
新年が明けると、みんなそれぞれ近所をあいさつ回りしていきます。
ベトナムの家屋では、ドアを入ると、すぐにお茶セットの用意されている大きな木の机と椅子が置いてあり、そこで客をもてなします。
飴やお菓子やひまわりの種などの多彩なお茶請けをつまんで、お茶を飲みながらひとしきりおしゃべりして、また次の家に向かいます。
ベトナムの旧正月でも、日本のおせち料理のように、日持ちがする食べ物を年末に作っておき、正月にみんなで食べる習わしがあります。
テトのときに食べる料理をご紹介します。
「バインチュン」は四角い形をした、大きなちまきです。「ゾン」という大きな葉っぱの中にもち米と豚肉と緑豆を包んで、8時間ぐらい蒸して作ります。
もっとも、都市部では「買う」のが定番です。
ベトナムでもらっきょうを食べますが、日本のものより甘さは控えめです。
牛肉のものと豚肉で作ったものがあります。
肉のゼリーもテトの定番一品です。
豚の耳とキクラゲの入ったコリコリした食感の煮こごりのような料理です。
揚げ春巻きは、テト以外にも、1年を通していただく定番のご馳走です。
本当に美味しいので、あなたも機会があればぜひ食べてみてください。
ベトナム人はみんなで集まって食べる時は、テーブルに座るのではなく、地べたにゴザを敷いて床にベタ座りしてみんなで料理を囲んで食べます。
ベトナムの男性はお酒が大好きです。
テトになれば、みんなこぞって「モッ・ハイ・バー・ゾー(1・2・3・かんぱい)!」と乾杯します。
ベトナムのお酒はアルコール度数が濃く、小さなガラスのおちょこに入れてクイッと一気に飲み干すスタイルです。
そのように新年の挨拶回りを何件もしていくと、必ず、駆けつけに一杯、「呑みにけーしょん」をさせられるため、だんだんベロンベロンに酔っていくのがベトナムの男たちの旧正月です。
Rabilooのスタッフにベトナム人にとって「テト」はどれほど大切なのか聞いてみました。
フックさん:「ベトナム人にとってテトは本当に大切だと思います。テトに故郷に帰れなかったら、すごく悲しく感じますね。テトは家族が集まる時期なので、一緒に新年を迎えられなかったら、本当に残念です」
ダットさん:「私にとってテトは大切です。1年に1回だけの機会なので、遠くで仕事をしている人は誰でも故郷に帰って、家族と一緒に食事をしたり、おしゃべりをしたりするので、もしその期間に帰れなかったらすごく悲しくてたまりません」
日本にも大勢のベトナム人がいますが、テト休みに国へ帰れないのは、彼らにとって本当に寂しいことなんですね。
この記事では、ベトナムの旧正月「テト」についてご紹介しました。
ベトナムでのテトは、クリスマスと盆と正月が一気にきたような一大イベントです。
しかし、テト休み中、首都のハノイは閑散とします。いつもの大渋滞が嘘のように道がガラガラに空いて、筆者はそんな一年で一度しか見られないテトのハノイが意外と好きです。
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