もみ徳 × Rabiloo|予約アプリ開発インタビュー
サロンDXで13店舗を回すもみ徳が6年かけて育てた予約アプリと、スタッフ配分の自動化
福岡市内で13店舗を展開するマッサージ・リラクゼーションサロン「もみ徳」は、紙・Excel・電話予約によるアナログ管理の限界に直面していました。現場の混乱や機会損失を解いたのは、開発パートナーのRabilooと共に作った独自の予約アプリです。
1店舗の挑戦から始まり、13店舗の運営を支える予約システムへ育つまでの6年間を伺いました。
アプリ導入前の3つの課題
アプリを入れる前のもみ徳で起きていたことは、大きく3つありました。
- 案内されないメニューが出る 電話が混むと、スタッフは60分コースしか受けなくなる
- リピート施策が回らない DMもメールもショートメールも効かず、集客コストだけが増える
- 紙とExcelがトラブルを生む 予約の配分が人の手なので不公平が起き、紙の保管と処分にも手間がかかる
課題1 電話予約中心で起きていた機会損失と売上低下
まず、アプリを導入する前の運営状況について教えてください。
高さん
アプリを導入するまでは約10年間、普通のマッサージ店と同じように電話予約が中心でした。スタッフが紙の予約表に書き込んで、それを見て判断する。仕事もあるわ、電話もあるわでテンパってる状況をずっと見てたんですけど、本当に大変だったんです。
あと大きな問題だったのが、電話だとスタッフが忙しい時に「60分コース」しか受け付けなくなってしまうことです。本当は80分や100分のコースもあるのに、案内を端折ってしまう。その結果、5〜6年経つと「60分しかやっていない店」だと思われてしまい、売上に大きく影響していました。
課題2 リピート施策が回らず、集客コストだけが増えていった
高さん
なにより一番感じたことは、集客に一番悩んでたことで。新規の集客よりも、僕らはリピーターさんを大事にするので、たくさん来てくれるっていうのを狙ってたので。リピーターさんが一度来た後に、もう一回来る時にどうすればいいのかっていうのをずっと悩んできたんですね。DMとかメールとかショートメールとか、色々工夫して作ってたんですけど、なかなか効果が悪くてリピートが上がってないんです。
課題3 紙・Excel管理がスタッフ間トラブルと属人化を招いていた
アナログ運営では、具体的にどんな問題が起きていたのでしょうか。
高さん
アナログだとスタッフ同士で「自分に有利な予約」を誘導したりといった不公平が起きやすく、人間関係のトラブルが絶えませんでした。それを防ぐために自分でExcel(エクセル)を使った管理システムも作りました。到着ボタンを押すと次の担当が決まるような仕組みでしたが、Excelなのでバグや動作の重さに限界を感じていました。
データの管理面でも課題がありましたか。
高さん
データの「保管と処分」です。紙の予約表は溜まると何百枚、何千枚にもなります。それをシュレッダーにかけるのがとにかく大変で。音もうるさいから営業時間中にはできないし、個人情報の保管という面でも神経を使いました。今はペーパーレスが進んで、本当に楽になりましたね。
きっかけは、リピート施策の失敗だった
アプリ開発を決意した直接のきっかけは何だったのですか。
高さん
実は広告で一度、お客様からこっぴどく怒られたんです。数千件一斉に送れるショートメール配信ツールを使ったのですが、それがルールを逸脱したもの(スパム扱い)で。朝から苦情の電話が鳴り止まず、「これはマズイ、もっと別の方法を探さないと」と思ったのがきっかけです。
それで思いついたのが「アプリがいいな」ってことでした。携帯の中にアイコンがあって、ずっと目の前にある、名刺があるような感じで定期的に思い出してくれたりとか。あとはプッシュ通知ですね。
アプリ開発未経験から始まった、パートナー探し
当時、アプリ開発の相場感はお持ちでしたか。
高さん
それが良かったから「アプリしようかな」と思って、結構安易に考えたというか(笑)。ランサーズとかそういう会社で広告を出してて、めちゃくちゃ安くしてたんですね、5万円とかで(笑)。今思うと本当に「バカじゃないの?」って、アプリ5万円で作れるかって(笑)。分からなかったからね。
中継ぎ業者への不信から生まれた目利き力
高さん
僕が「5万円」という破格の条件を出したにもかかわらず、10社くらいの問い合わせが来たんです。1社ずつ会っていったのですが、多くの業者は熱心に話を聞いて「次はこうします」と言う割に、しばらくすると音信不通になったり、途中で連絡がつかなくなったりしました。
中には「5万円で大丈夫です」と言いながら、実際は海外の会社との間に立っているだけの中継ぎ業者も多かったです。自分たちで開発せず、間に立ってお金を取るだけの人が多くて、「この業界、本当に大丈夫か?」と不安を感じていました。
「レスポンスの速さ」が決め手に
高さん
他社は回答に時間がかかるのですが、クオンさんは「これはできる」「これはできない」という回答がとにかく早くて明確だったんです。曖昧な時も「後でこちらから提案します」と、実際に手を動かしている人特有のスピード感がありました。最後にお会いしたのですが、会った瞬間に「あ、この人だ。僕が探していたのは、ちゃんと具体的にやるべきことを持っている人だ」と確信しました。迷いはなかったですね。
小さく始めて、大きく育てる
フェーズ1:プッシュ通知からスタート(2019年)
高さん
最初、僕にとってアプリは「財布の中の名刺」のような存在でした。アイコンが目に入ることで思い出してもらう広告ツールですね。
ただ、そのプッシュ通知の効果を狙っていて、「アイコンが残ることでお客さんが見てくれる」と思ってたんですけど、それがなかなか、お客さんはやっぱり見てくれないんですよね。原因はプッシュ通知(という手法)ではなかったんです。通知はみんなほとんどオフにしているし、おまけにアプリをダウンロードした後、用が済んだらアンインストールされたりもするので、結局、効果が思ったようには上がらなかったんです。
フェーズ2:ポイント機能で「使う理由」を作る
高さん
マッサージはLINEのように毎日使うものではないですから。そんな時、お客様から「おたくのアプリはメリットがない。他所はポイントやポイント抽選会があるのに」と怒られたんです。そこでクオンさんに相談して「ポイント機能(QRコードスキャン)」を導入したところ、反応が一気に良くなりました。文句を言っていたお客様も喜んで使ってくれるようになり、手応えを感じました。
フェーズ3:ネット予約システムで一気に加速
高さん
ポイントの次は、もっとアプリを使ってほしいと考え、「ネット予約」の導入を決めました。もともと僕がExcelで自作していた管理の仕組みを、本格的なネット予約システムとしてアプリに組み込めれば、お客様が店に来る時に必ずアプリを開くようになります。かなりの大規模な開発になりましたが、これを実現したことで利用頻度が大きく変わりました。
今はアプリでお客様が自分でメニューを見て選べるので、ロングコースの利用が3〜4割まで増え、客単価も大きく変わりました。
「予約の自動割り当て」が現場を変えた
予約システムの開発で、特にこだわった点は。
高さん
うちは技術的に難しい部分にもこだわりました。普通の予約システムだと、ただ予約を順番に受け付けるだけになるんですが、うちは『次にどのスタッフが担当するか』という接客の順番(ローテーション)までシステムに組み込みました。
よくあるお店だと、壁にホワイトボードを貼ってアナログでスタッフの順番を管理していますが、うちはそれをデジタルで自動的に回るようにしたんで、非常に楽ですね。
「公平性の自動化」がスタッフ同士の人間関係を改善した
高さん
ネット予約でお客さんがどんどん入ってくるんですけど、それ以上にスタッフの「操作の簡単さ」とか、おまけに「人間関係」とかも結構良くなってくる。トラブルが圧倒的に減ってくるんですね。
電話予約の時代は、スタッフが手動で受け付けるため、自分に都合の良い時間帯の予約を優先したり、稼ぎたいスタッフが長時間コースを勧めたりということが起きていました。システムが予約を振り分けるようになったことで、この不公平感がなくなっています。
高さん
僕が一番印象的なのは、アプリを出してから、自分はもう多くのスタッフと毎日会う必要が本当になくなったんです。自分の店には、月に2〜3回しか行かないですよ。ほとんど皆さん、自分たちで回してる(自律して動いている)んですね。
だから、アプリ導入は集客だけじゃなくて、店のスタッフの関係とかも結構良くしてくれてるな、というのが「当たり(成功)」だったと思ってますね。
アプリ導入は集客だけじゃなくて、店のスタッフの関係とかも結構良くしてくれてる。
「選べる」「残る」「伝わる」予約アプリへ
履歴が残るから、「前回の人」を探さなくていい
お客様側から見て、どんな体験が改善されましたか。
高さん
アプリの前は、本当に出たらめで大変でした。例えば、お客様が「前回良かったから次も同じ人を指名したい」と思っても、お名前を書き忘れていたり、データがお客様の方に残っていないんです。わざわざ電話して「前回誰だった?」と聞かなければならず、多くのお客様が「もういいや」と諦めたり、勘違いしたりしていました。
アプリなら履歴が残るので、お客様が自分で「前回はこの人だった」と調べられます。コメントやフィードバックも直接送れますし、もし「この人は合わない」と思えば、履歴からNG設定をすることもできます。お客様が自分で選べる仕組みになったのは大きいです。
事前希望でミスマッチを防ぐ
接客の質についてはいかがでしょうか。
高さん
以前は「ゆっくり休みに来たのに、スタッフが喋りすぎてストレスだった」というお叱りを受けることがありました。今は予約時に「静かに過ごしたい」「しっかり喋りたい」などの希望をチェックできるようになっています。スタッフが事前にそれを把握できるので、ニーズのミスマッチがなくなりました。
アプリ内レビューで、口コミサイトに流れる不満を店内で回収する
高さん
以前は店に直接言えない不満が、外の口コミサイトに書かれてしまい、店の評判を落とすことがありました。今はアプリ内でしっかりレビューを拾えるので、ニーズを適切に汲み取ってフィードバックできています。お客様との交流において、アプリは本当に良かったですね。
スタッフアプリ「もみみん」で運営の解像度が上がった
「スタッフのために」という提案から生まれた
お客様向けアプリとは別に、スタッフ専用アプリも開発されたんですね。
高さん
実は、スタッフ専用アプリの「もみみん」も、クオンさんが提案してくれて出来たものなんです。
スタッフが自分のスマホで使えるアプリで、出勤状態の確認、コース登録、施術履歴の確認、予約状況の把握などができます。店全体の予約をリアルタイムで見られるので、休み時間の調整がしやすくなり、お客様に迷惑をかけずに済みます。
スタッフからも好評
特に好評な機能は。
高さん
施術が終わった後に、そのお客様の特徴や注意点を「自分用のメモ」として残せる機能です。施術中はメモが取れませんから、終わった後にすぐ入力できるのは便利だと、スタッフからも好評です。家でもどこでも書けますしね。
あと、僕が頼んでいないのに勝手につけてくれた良い機能があって(笑)。「施術履歴の絞り込み検索」です。例えば「高さんが担当した、過去の全来店データ」を一瞬でまとめられる。僕は指示していなかったのですが、勝手に実装されていて「おお、これは便利だ」と驚きました。さすがプロだなと。
小鳥のさえずりで予約をお知らせ
現場の反応はいかがですか。
高さん
現場のスタッフに聞くのが一番ですが、僕から見てもかなり「楽」になったようです。以前は電話予約が鳴るたびに手を止めていましたが、今は「ピコピコ」と小鳥の鳴き声(通知音)がすれば予約が入ったと分かる。今は手元で状況が分かるので、精神的にも余裕を持って仕事ができているようです。
僕のオーダーは時々当たり前のように見えて、実は技術的に難しいことが多々あります。例えば、予約が入った時に「小鳥の鳴き声」を鳴らしてほしいというリクエスト(笑)。最初、開発側から「無理だ」と言われたんですけど、PMが「分かりました」と引き受けてくれて、しばらくしたら実現してくれた。後で他のシステムを見たら、そんな機能はどこもやっていないんですよね。よくぞ作ってくれたなと、その「しぶとさ」に感謝しています。
最初、開発側から「無理だ」と言われたんですけど、PMが「分かりました」と引き受けてくれた。
高齢ユーザーのために考えたUI設計
アプリのUI設計で特に意識された点は。
高さん
全世代ですが、メインは30代から50代半ば。男女比は半々くらいです。ただ、日本は高齢社会ですから、お年寄りのお客様も多いですし、実はスタッフも高齢で老眼の方が多いんです。
だから、一般的なアプリは字が小さすぎて見づらい。うちのアプリを開発する時にクオンさんにお願いしたのは、「とにかく字を大きく、見やすくしてほしい」ということでした。色もはっきりしています。
値上げしたのに、お客様は増えた
導入後、数字面での変化はありましたか。
高さん
正確な分析はこれからですが、感覚としてはアプリ導入後、客数は2割ぐらい増えているんじゃないかと思います。
実は今、料金も上がっているんです。以前は60分2,300円〜2,500円という時代がありましたが、今は60分3,500円です。普通は値上げをすればお客様は減るものですが、驚くことにアプリ導入後の今の方が、昔の安かった時代よりもお客様が多いんです。
例えばこの駅前店だと、以前は1日4人来れば多い方でしたが、今は毎日最低でも4人、多い時は6〜7人の予約が入ります。一度入ったお客様がアプリを通じて定着し、離れていかないという自信があります。
店舗間回遊が生まれ、機会損失が減った
高さん
アプリができてから、お客様の流れが面白くなりました。以前は近くの特定の店舗にしか行かなかったお客様が、アプリで他店舗の存在を知るようになったんです。いつもの店舗が予約でいっぱいだった時、今はアプリで空いている別のもみ徳の店舗を探して予約してくれます。お客様が「もみ徳」というグループの中で循環するようになり、機会損失が減りました。
5店舗以上なら、予約ポータルより自社開発のほうが安い
高さん
結論から言うと、経費は確実に削減されています。浮いた広告費を別の施策に回せるようになりました。
これから10店舗、20店舗と展開していくなら、絶対に自社アプリの方がメリットが大きいです。例えば、大手予約サイト(ホットペッパービューティー等)を5店舗で本格的に使おうとすると、1店舗あたり月8〜9万円、5店舗で月40〜50万円もの掲載料がかかります。それだけのコストをかけ続けるのと、自社アプリを運用するのとでは、長期的な経営の安定感が全く違います。
サロン業界でDXを検討している方へ
「最初からネット予約」が鉄則
サロン経営でDXを検討している経営者へのアドバイスをお願いします。
高さん
僕らは「作りながら改善」を繰り返してきたので、今のシステムは構造が非常に複雑で、後から継ぎ足した部分も多いんです。
アドバイスとしては、僕のように途中で継ぎ足すのではなく、最初から「ネット予約システム」を核として取り入れるべきだということ。ネット予約が入るだけで、店舗の運営システムは大きく変わります。
少しずつ拡大しようとせず、最初から重要な機能をしっかり決めて作り込む。そして何より、経営者自身が「絶対にこれをやり遂げる」という情熱(パッション)を持って取り組むことが不可欠だと思います。
バグは「一緒に乗り越える」もの
高さん
これからアプリを始めたいという社長さんたちに伝えたいのは、「バグは必ず起きる」ということです。アプリでスタートするなら、不具合があっても落ち着くこと。開発者も一生懸命ですし、必ず解決策は見つかります。
椅子やベッドのような「既製品」を作るのとは訳が違うんです。OSのアップデートや言語の変化など、自分たちではコントロールできない要因で状況は常に変わります。そこを理解して、開発会社を責めるのではなく、一緒に乗り越えていく姿勢が大切です。
6年間の総括は「後悔なし」の一言
最後に、この6年間を振り返っての感想をいただけますか。
高さん
いろいろ大変なこともありましたが、もし6年前に戻って「こんなにお金も時間も苦労もかかるけど、やりますか?」と聞かれたら、僕は迷わず「やっぱりやる」と答えます。後悔は全くありません。正しい道を選んできたと確信しています。
Rabilooじゃなかったら、僕は途中で投げ出していたかもしれません(笑)。これからも一緒に成長していきましょう。
予約の受け方を変えると、店の回り方が変わりました。紙の予約表をなくすことでも、通知を送ることでもなく、誰がどの予約を取るかをシステムが決める。それだけで、案内されないコースがなくなり、スタッフ同士の不公平感が消え、社長が毎日店に立つ必要もなくなりました。6年かけて積み上げたのは、機能の数ではなく、その一点です。
本記事は2026年1月実施のインタビューを基に構成しています。客数の増減については、高氏の所感であり実測値ではありません。
この事例の概要
会社概要
- 企業名
- もみ徳
- 代表
- 高 健(こうけん)
- 創業
- 2010年
- 事業内容
- マッサージ・リラクゼーションサロン運営
- 店舗数
- 福岡市内13店舗(2026年1月現在)
- 主要サービス
- もみほぐし60分から120分、個人スペシャルメニュー(足つぼ、タイ式、オイル等)
Rabilooが開発したもの(2019年から現在まで)
- 01予約管理システムスタッフへの自動割り当て機能つき。接客の順番をシステムが回す
- 02会員アプリ施術履歴、NG設定、レビュー、事前希望の登録
- 03スタッフアプリ「もみみん」出勤状態、コース登録、施術履歴、予約状況、自分用メモ、絞り込み検索
- 04ポイント管理QRコードスキャンで付与
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現在の業務や既存システムの状況を伺い、どこから着手できるかを整理してご案内します。要件が固まっていない段階でも構いません。
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