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オフショア開発でまず初めに克服しなければならないのは、言葉の壁です。
オフショア開発では、日本語の通じない外国人エンジニアチームと開発を行うため、「円滑なコミュニケーション」が成功の大きな鍵を握っています。
日本語でやりとりできるのがベストですが、相手側の日本語能力に問題があったり、こちらの日本語が正確に伝わらなかったりして、コミュニケーションがうまくいかないことがあります。
そのため、ベンダ選定の際に使用する言語を「英語」にする企業も増えています。
オフショア開発のコミュニケーション言語を英語にすることにはどんなメリットがあるのでしょうか。
本記事では、
オフショア開発で英語を使用するメリットとデメリット
オフショア開発委託国の英語能力
オフショア開発で英語を使用する際の注意点とコツ
このようなテーマで、欧米市場ともオフショア開発の取引実績がある、弊社Rabiloo(ラビロー)のブログ編集部がわかりやすく解説していきたいと思います。
オフショア開発のコミュニケーション言語は主に日本語か英語です。
オフショア開発はアメリカ企業から始まったものなので、プロジェクトは元々全て英語で行われてきました。
日本企業のオフショア開発は、同じ漢字圏で日本語学習者の多い中国で行われてきたためコミュニケーション言語として日本語も使われるようになりました。現在オフショア案件の最も多いベトナムも日本語学習者が多く、日本語でコミュニケーションを行う現場がほとんどです。
オフショア開発では、日本と海外の橋渡しをする役目を担うブリッジSEと呼ばれるエンジニアが、コミュニケーションと翻訳、プロジェクトの進捗報告を行います。
オフショア開発の体制で最も一般的なのは、日本語が堪能な外国人エンジニアがブリッジSEを努めるパターンです。この場合、プロジェクトは全て日本語で進行します。
もう一つのパターンは、英語の堪能な日本人エンジニアが英語で海外チームとのやり取りを行う体制です。この場合、日本側のチームは基本的に日本語でプロジェクトを動かし、ブリッジSEを通して英語で海外チームとコミュニケーションを取ります。
さらに、ブリッジSEを立てず、プロジェクトのコミュニケーション言語を英語にしてしまうというパターンもあります。
この場合、欧米企業と同じように海外チームをグローバル開発の拠点としてスムーズにやりとりすることができます。
インドやフィリピンなど英語が第二公用語の国で開発を行う場合、この体制が取りやすいでしょう。
オフショア開発でコミュニケーション言語を日本語ではなく英語にするならどんなメリットがあるでしょうか。
ここで以下の4つのメリットについて考えてみましょう。
優秀なエンジニアを獲得しやすい
ブリッジSEに依存しない体制が作れる
開発コストが下げられる
英語圏の海外市場への進出
英語で開発を行うなら、優秀なエンジニアを獲得しやすいというメリットがあります。
近年、日本企業のオフショア開発が活発になった理由は、日本の慢性的なIT人材不足の解消のためだと言われています。
しかし、エンジニアの日本語人材と英語人材では圧倒的にリソースの量が違います。
基本的にどの国のエンジニアも最低限の英語はできます。
このように、英語対応可能にすることでベトナム以外にもフィリピンやインドなど選択肢の幅が大きく広がり、豊富なリソースの英語人材から優秀なエンジニアを獲得できるというのは大きなメリットです。
英語で開発を行えばブリッジエンジニアに依存しない開発体制が組めます。
オフショア開発がうまくいくかどうかはブリッジSEの能力に依存している部分が大きく、優秀なブリッジエンジニアが辞めてしまえばプロジェクトがうまくいかなくなるリスクもあります。
また、伝言ゲームのようにブリッジSEがボトルネックとなって、コミュニケーションがスムーズにいかない現場もありますが、英語で開発を行うことでブリッジSEをいちいち通さなくてもコミュニケーションが取れるようになります。
オフショア開発ではプログラマーの単価は安いですが、コミュニケーションコストが余分にかかります。ブリッジSEのアサインもその一つで、ブリッジSEは通常の開発体制にプラスして加えられるポジションです。ブリッジSEはその仕事の専門性から単価が高く設定されています。
英語で開発を行うことで、英語圏の海外市場へ進出する可能性も広がります。
オフショア開発を日本市場のアウトソーシングではなく、グローバル開発の拠点として活用していく動きが今後さらにみられていくでしょう。
英語能力の高いアジアの国々 参照:EF -EPI 2022 https://www.efjapan.co.jp/epi/
ではここで、主なオフショア委託国であるアジア各国の英語能力を大まかに把握しておきましょう。
EF英語能力指数(EF EPI)による世界111カ国の英語能力ランキングに基づき、日本とオフショア開発委託国の英語能力を順位が高い順に並べると以下の通りです。
では、それぞれの国の英語能力の特徴を解説します。
フィリピンはベトナムに次いで日本企業からのオフショア開発案件が多い国です。
英語はフィリピンの公用語の一つで、人口の9割が英語を話します。
フィリピンはアメリカの植民地であったため、フィリピンで話される英語はアメリカ英語がベースになっています。
フィリピン英語は英会話レッスンや英語留学でもおなじみで、聞き取りやすい英語です。
インドはアメリカの大手企業がオフショア開発を行うIT大国で、エンジニアの技術が非常に高いことで知られています。
英語はインドの準公用語で、国民の約2割(2億人)が英語を話せます。
インドの英語は「ヒングリッシュ」とも言われ、訛りがきつく、イギリス英語の影響を受けています。
インドよりフィリピンの方が英語能力が高いとされています。
英語はベトナムの公用語ではありませんが、ベトナムはアジアの中でも英語力の高い方です。
ベトナムのオフショア開発はほとんど日本語で行われますが、南部のホーチミンは欧米市場を対象としたオフショア開発も盛んなため、英語人材も多いです。
若いベトナム人の英語習得はかなり良く、エンジニアであれば、ほぼ100%テキストベースのコミュニケーションは英語で行えます。
ただ、ベトナム人の英語の発音には独特のクセがあり、日本人にとって聞き取りにくいのが難点です。
インドに技術を学んだバングラデシュは、インドやベトナムのIT企業が下請け開発を行う、単価の安いオフショア委託国として注目されています。アジア有数の親日国ですが、日本語人材は少なく、プロジェクトは英語で行われることが多いです。
バングラデシュの公用語はベンガル語ですが、英語も官公庁や教育機関で使われているため、英語は事実上の公用語のような扱いです。都市部のビジネス現場では英語が通じます。
バングラデシュはインド同様イギリスの植民地だったためイギリス英語の影響を受けています。しかしバングラデシュ英語の訛りはインドほどきつくないと言われています。
ミャンマーは英語能力ランキングではかなり下の方です。生活で英語を話すことはなく、教育を受けたビジネスパーソンの間でのみ英語が通じます。
ミャンマーはアジア最後のフロンティアとして、オフショア開発でも注目され始めましたが、クーデターなどカントリーリスクが高いため新規の案件は少ない状況です。
オフショア開発で英語を使うとメリットが多いですが、デメリットについても考えましょう。
多くの国で英語はエンジニアの母語ではありません。
日本人にとっても英語は第2外国語なので、細かいニュアンスがうまく伝わらない時があります。
英語をコミュニケーション言語に選んだとしても、プロジェクトに関わる人全員が英語を流暢に話せるわけではありません。
そもそもITプロジェクトは、日本人同士であってもコミュニケーションが難しいので、そこに「英語」というハードルが課せられると負担がさらに大きくなります。
やはり日本語で開発を行ったほうが楽だ、という判断もあるでしょう。
英語で開発を行う場合、コミュニケーションで失敗しないために何を注意すればよいでしょうか。ビジネスで英語をうまく使うコツを最後に紹介したいと思います。
オフショア開発で海外チームとコミュニケーションを取るのに、中学レベルの英語でも問題ありません。
日常の英会話で使う単語は約3,000語くらいだと言われており、中学、高校で習う単語も3,000くらいです。
そこにIT関連の専門用語を加えると、中学レベルの文法力があれば十分にコミュニケーションが取れます。中学英語を復習するだけでもかなり効果があります。
ビジネスでは、「シンプルに」「わかりやすく」話すことが重要です。プロジェクトではテキストベースのコミュニケーション(チャットなど)が多くなるのでGoogle翻訳なども活用できます。
普段当たり前のように使っている英語が、実は和製英語で全然通じないということがあるので要注意です。
英語圏でSystem Engineerは「システム工学の専門家」のような意味になり、日本で使われているような意味では使われていません。
business analyst や software developer と表現しないと通じません。
英語のhearingは「裁判の公聴会」のような意味で使われます。日本語で「ヒアリングを行う」という意味で使うならinterviewがふさわしいでしょう。
システムがダウンすることを「システムダウン」と言いますが、これも和製英語です。正しくは system failure とか system crash と言います。
オフショア開発でのコミュニケーションの大半はチャットやメールなどのテキストベースになります。
その場合、Google翻訳やDeepLなどの機械翻訳を活用するのもありです。
DeepLのAI翻訳が現在では最も精度がいいと言われてます。
最近では、ChatGPTなど生成AIの精度が向上し、かなり自然な翻訳ができるようになりました。
覚えておきたい点として 英→日 の精度はかなり良くなりましたが、日→英 の精度はまだ若干不自然さがあります。
機械翻訳をうまく活用するコツとして、
日本語独特の表現(お疲れ様です、お世話になりますなど)を使わない
正しいシンプルな日本語で翻訳する
主語や目的語をきちんと入れる
以上の点、シンプルな文法を意識した文章で投げると、翻訳の精度が上がります。
テキストベースのやり取りはほとんど不自由はなくなってきました。
オフショア開発で英語を使うとメリットがあり、選択肢が広がります。
優秀なエンジニアを獲得しやすい
ブリッジSEに依存しない体制が作れる
開発コストが下げられる
英語圏の海外市場への進出
英語を使ったオフショア開発で人気があるのはフィリピンです。また、インドも非常にスキルの高いエンジニアを獲得できるのであらためて注目されています。
弊社Rabiloo(ラビロー)はベトナムと日本に拠点を置くソフトウェア開発企業です。
日本市場と英語市場の両方に取引先があり、多くの案件を抱えています。
弊社の日本市場向けオフショア開発サービスにおいては日本語を使用しております。
もし、やはり英語ではなく日本語でプロジェクトを進めたいというご希望の企業様、ぜひ弊社のエンジニアをご利用ください。
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