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【まるっと解説】MVP開発とは?プロトタイプとアジャイルとの違いは

2024/10/14
2023/08/01
【まるっと解説】MVP開発とは?プロトタイプとアジャイルとの違いは

スタートアップ企業の約90%が失敗すると言われています。

失敗する企業のほとんどは、仮定に基づいて製品を構築し、ユーザーにとって本当に実際的なソリューションであるかどうかを確認せずに、高額なコストをかけてウォーターフォールで開発しています。

このような失敗を避けるには、ユーザーの反応をテストすることが重要です。

そのためにMVP(実用的な最小限の製品)を作成する必要があります。MVPを通じて、市場での適合性を見極め、ビジネスで生き残っていくための道標を得ることができます。

今日では、多くの大企業も同じアプローチを取り入れており、ユーザーのフィードバックを得るためにMVP開発を活用しています。

MVP開発とはどんなアプローチなのでしょうか。なぜ、MVPが注目されていますか。

本記事では、ソフトウェア開発におけるMVPについての概要を簡単にご紹介します。

 

  • MVPとは何か

  • プロトタイプやアジャイルとの違い

  • MVP開発のメリット・デメリット

  • MVP開発の開発事例

MVP開発とは?

MVP開発とは

MVPとは、Minimum Viable Product(最小限の実現可能な製品)の略称で、ユーザーのニーズを満たす必要最小限の機能を備えたミニマムな製品を開発し、ユーザーのフィードバックをもとに製品を改善していく手法です。

いきなり最初から全てのニーズを満たす複雑な機能を備えた完璧な製品を作るのは困難で、コストも時間もかかります。さらに、多額のコストを費やして完成させたプロダクトが市場やユーザーのニーズを満たしていなかった、ということも起こり得ます。

それでそうしたリスクを避けるために、採用される手法がMVPです。

MVP開発とは、必要最小限の機能を備えた初期バージョンを早期にリリースし、市場反応を見ながら徐々に改善を繰り返すという開発手法です。

​​MVPは、新しい製品やサービスを開発する際によく用いられるアプローチです。

ソフトウェア開発におけるMVP

例えば、新しいスマートフォンアプリを開発する場合、MVPでは初期バージョンに最も重要な機能だけを組み込みます。これにより、開発期間を短縮し、早期に製品を市場に投入できます。

MVPでリリースされたアプリはまだ完成形ではありませんが、実際に動作する製品であり、市場やユーザーの反応を確認できる形で提供されます。

そして、実際のユーザーのフィードバックを収集しながら機能を改善していきます。

MVP開発の目的

MVP開発の主な目的は、製品の市場適合性を検証することです。つまり、製品やアイデアは市場に本当に受け入れられるのか、ユーザーや市場の反応を見ながら、製品に対するニーズを把握します。

得られたフィードバックを元に、製品の改善や進化を行い、より満足度の高い製品を提供することが目標となります。

また、MVPは、最小限の機能だけを実装するため、開発にかかる時間を短縮できます。早期にリリースすることで、競合他社に先駆けて市場に投入できる利点があります。

MVP開発は、新規事業の立ち上げや、市場の需要が不確実な場合に有効な手法です。

MVP開発の特徴

最小限の機能

MVPは、製品開発に必要な最小限の機能だけを備えています。製品の核となる機能や基本的な機能のみを選択し、無駄な機能を排除します。

早期リリース

MVPは、製品の早期リリースを重視します。完璧な製品を作り上げるのではなく、最初の段階からリリースしてユーザーの反応を確認します。

フィードバックと学習

MVPのリリース後は、実際のユーザーや顧客からのフィードバックを収集し、製品を改善します。フィードバックをもとに学びながら製品を進化させることが重要です。

MVPとリーンスタートアップの関係

MVP(Minimum Viable Product)が登場した背景には、エリック・リース(Eric Ries)によって提唱された「リーンスタートアップ」の考え方が大きな影響を与えています。リーンスタートアップは、新しいビジネスの立ち上げや製品の開発において、効率的な進行とリスクの最小化を重視する手法です。

従来のビジネスモデルでは、製品やサービスを開発し、完成形に近い形で一度に市場に投入するというアプローチが一般的でした。しかし、これには高いリスクとコストが伴い、顧客のニーズを正確に把握することが難しいという課題がありました。

リーンスタートアップの考え方は、これらの課題に対処するために、以下のようなアプローチを提案しました。

  • 仮説の立案

  • 実証可能な形で製品をリリース

  • ユーザーのフィードバックを収集

  • イテレーションを繰り返す

MVPの登場は、従来のビジネス開発プロセスに対して革新的なアプローチを提供し、リスクを最小限に抑えながら効率的な製品開発とビジネスの立ち上げを可能にしました。これにより、アイディアを迅速に検証し、顧客のニーズに合った製品を提供することが容易になります。

MVPの種類

MVP開発は、製品やサービスに応じて様々な形態が存在します。MVP開発の種類としては、以下のようなものがあります。

プロトタイプ

プロトタイプMVPは、製品の基本的な機能やデザインを検証するために使用される最も一般的なタイプのMVPです。この段階では、実際の機能やデータベースには結びついておらず、デザインやユーザーインターフェースのテストを行います。

プロトタイプは、紙、ワイヤーフレーム、またはデジタルツールを使用して作成できます。

ランディングページ

ランディングページMVPは、製品のウェブサイトやランディングページを作成して、ユーザーの反応を測定するMVPです。

ランディングページは、製品の概要、機能、価格、および販売リンクを掲載したWebサイトです。

ランディングページMVPは、製品の市場性や需要を判断するために使用されます。

コンシェルジュMVP

コンシェルジュ MVP は、人間が手動で実行するバックエンドを備えたアプリです。これにより、開発に時間とリソースを投資することなく、優れたユーザー エクスペリエンスを実現できます。

例えば、ユーザーが予約を入れると、バックエンドは手動で返すという方法です。

オズの魔法使い

オズの魔法使いMVPも、人間が裏で作業を行う点で、コンシェルジュと似ていますが、大きな違いはユーザーはそのことに気づいていないということです。

このように実際の機能が存在しないか、一部だけ実装されている状態で、ユーザーには本物の製品と思わせるような体験を提供します。例えば、人間が裏で作業を行い、システムは自動化されているように見せることがあります。これにより、実際の製品を作成する前に需要と受け入れられる可能性を確認することができます。

ピースミールMVP

ピースミールMVP は、最初から作成するのではなく、既存のサードパーティツールを使用して構築されます。

この方法を利用すると自分で開発しなくてもアプリの外観と機能を得ることができます。アプリのアイデアに高度な機能があるが、それを実装するための時間やお金がない場合によく用いられます。

MVPとプロトタイプの違いは?

MVPとプロトタイプの違いは、「製品」か「試作モデル」かの違いです。

MVPは、製品の初期のバージョンで、最小限の機能を持っており、実際に市場に出します。

一方プロトタイプは、製品のアイディアやコンセプトを具体化するための初期の試作モデルです。

プロトタイプは、製品のデザインや機能の概要を示すことに重点を置き、製品の実装に焦点を当てません。

プロトタイプの主な目的は、製品のデザインや機能の確認、ユーザーエクスペリエンスの評価、技術的な実現可能性の確認などです。

これらのアプローチは、製品開発の異なる段階や目的に応じて活用されます。

MVPは製品の市場適合性を検証するために早期にリリースされ、フィードバックを収集して製品を改善します。

一方、プロトタイプは製品のアイディアやデザインの概要を評価するために使用され、実際の製品としてリリースされることを目指しません。

アジャイル開発とMVP開発はどこが違う?

MVP開発とアジャイル開発は、両方とも新しい製品やサービスの開発においてよく用いられるアプローチですが、それぞれ異なる特徴と重点があります。

MVP開発は、製品の初期バージョンを早期にリリースし、市場適合性の検証と製品の改善に焦点を当てます。

その主な目的は、早期に製品の市場適合性を検証し、実際のユーザーや顧客からのフィードバックを収集して製品を改善することです。MVPは、不要な機能を排除し、最も重要な機能のみを選択することで、効率的な開発と市場投入を実現します。

一方、アジャイル開発は、定期的なイテレーションによる進化的な開発と、顧客やステークホルダーのフィードバックを重視して製品を提供します。

アジャイルは、ソフトウェア開発におけるプロジェクト管理の手法であり、特にウォーターフォール(Waterfall)開発に代わるアプローチとして広く知られています。

アジャイルの主な特徴は、継続的な改善と進化を重視することです。開発チームは短期間のイテレーション(スプリント)を行い、製品を段階的に開発・リリースしていくことで、顧客の要求や市場の変化に迅速に対応できます。

MVP開発のメリット

MVP開発には以下のメリットがあります。

 

  • 早期リリースと市場検証

  • コストとリソースの最適化

  • ユーザーのフィードバックを得やすい

  • 早期に市場に投入できる

早期リリースと市場検証

MVPをリリースして早い段階で製品を実際のユーザーや顧客に提供することで、市場の需要や反応を確認できます。これにより、製品の市場適合性を検証することができます。

市場の需要や顧客の反応を実際のデータとして得ることで、製品の方向性を正確に把握できます。

開発コストの削減

MVP開発では、開発コストを削減できます。

これは、必要最小限の機能だけを開発することで、開発期間を短縮し、コストと開発リソースを最適化できるためです。

リスクを軽減し、無駄な開発を避けることができます。

ユーザーのフィードバックを得やすい

MVP開発では実際のユーザーのフィードバックを収集できるため、製品を改善するための貴重な情報が得られます。顧客のニーズや要望に応えることで、製品の満足度と競争力を向上させられます。

また、継続的な改善が可能なため、製品の品質を向上させることができます。

早期に市場に投入できる

MVPでは、必要最小限の機能だけを備えた製品を開発することで、早期に市場に投入することができます。これにより、競争力を高め、競合他社に先駆けて市場シェアを獲得することができます。

MVP開発のデメリット

MVP開発には以下のようなデメリットがあるため、開発前に十分に検討しておく必要があります。

  • 機能が制限される

  • ユーザーの不満

  • 競合他社のリアクション

機能が制限される

MVPは最小限の機能を持つ製品としてリリースされるため、初期段階では必要な機能が制約されます。

顧客のニーズに合致する製品を提供するためには、その後のバージョンの開発が必要になります。

ユーザーの不満

MVPは初期バージョンなので、製品はいわば不完全な状態です。機能も限られているため、ユーザーの満足度が低くなる可能性があります。

また、ユーザーに製品の魅力を伝えることが難しくなる可能性があります。

このようなユーザーの不満に対処するためには、改善とイテレーションを行う必要があります。

競合他社のリアクション

MVPでは早期に市場に参入するため、競合他社に先を越されるリスクがあります。

競合他社が同様の製品をリリースしたり、改善を行ったりすることで、市場シェアを奪われる可能性もあります。

MVP設計のステップ

MVPでソフトウェアを設計するには以下の手順を踏んでいきます。

MVP設計では、製品の最小限の機能を決定し、早期にリリースして市場適合性を検証するための計画を立てることが重要です。

ステップ1: アイディアの検討と仮説の立案

最初に、製品やサービスのアイディアを検討します。誰の問題を解決するか、どのような価値を提供するかを明確にしましょう。そして、そのアイディアに対する仮説を立てます。例えば、「このアプリが特定のユーザーに需要がある」という仮説を立てることがあります。

ステップ2: MVPの定義と機能の選択

次に、MVPとして最小限の機能を定義します。必要な機能を洗い出し、最も重要な機能に絞り込みます。MVPの目的は、仮説の検証であり、不要な機能は削除します。

ステップ3: MVPの実装

MVPの機能を実装します。開発が必要な場合は、プログラミングを行います。ただし、初心者の場合は、プロトタイピングツールやオンラインのアプリビルダーを使用することも考えられます。重要なのは、実際に動作する形でMVPを作成することです。

ステップ4: MVPのリリースとフィードバック収集

MVPが完成したら、実際のユーザーにリリースします。これにより、ユーザーのフィードバックを収集できます。ユーザーの反応を観察し、アイディアの仮説が成立しているかどうかを確認します。

ステップ5: フィードバックの分析と改善

ユーザーから得られたフィードバックを分析し、MVPを改善します。不具合や改善点を洗い出し、次のバージョンのMVPに反映させます。

ステップ6: イテレーションの繰り返し

ステップ4と5を繰り返して、MVPを改善し続けます。このイテレーションを繰り返すことで、徐々に製品が成熟していきます。

MVP設計のステップ

 

 

MVP開発の事例

以下は成功したMVPの例です。今では、大規模サービスに成長したプロダクトも、MVPでスタートしています。

Facebook

Facebookは、最初のバージョンである「The Facebook」としてハーバード大学の学生に提供されました。この初期のMVPでは、学生たちが自分のプロフィールを作成し、他の学生とつながることができる基本的な機能が提供されていました。このMVPの成功により、Facebookは急速に成長し、世界中で人気のあるソーシャルメディアプラットフォームとなりました。

Amazon

ジェフ・ベゾスは、Amazon を立ち上げる前に、コンシェルジュまたはオズの魔法使いの MVP タイプを使用していました。彼は自分で注文を集め、本を購入し、顧客に送りました。実際に多くの注文があったことは、人々がこのサービスを必要としていることを裏付けました。そこで彼はウェブサイトに書籍を追加し、倉庫を購入しました。

Amazonの初期のMVPとしては、オンライン書籍販売を中心に展開されました。ユーザーはオンラインで書籍を購入し、自宅に配送されるシンプルな仕組みでした。この初期のMVPは、オンラインでの書籍販売に対する需要を確認し、その後、商品カテゴリーを拡大して世界最大のオンライン小売業者に成長しました。

Dropbox

Dropboxは、ファイルの同期・共有サービスとして始まりました。初期のMVPでは、ファイルの同期と共有機能だけを持つシンプルなプロトタイプをリリースしました。この初期バージョンを通じてユーザーの反応を観察し、機能追加や改善を行いながら成長していきました。

まとめ

MVP開発は、リスクを最小限に抑えながら、製品の成功確率を高めるための有効なソフトウェア開発手法です。ただし、MVP開発にはデメリットもあるため、開発前にメリットとデメリットを十分に検討する必要があります。

MVP開発を成功させるためには、次の点に注意する必要があります。

  • ユーザーのニーズを明確に理解する

  • 必要最小限の機能を備えた製品を開発する

  • ユーザーのフィードバックを積極的に収集する

  • フィードバックをもとに製品を改善する

  • 開発を継続する

 

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