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人材不足に悩む企業にとって、エンジニアの採用や確保は深刻な課題となっています。また、デジタル人材の育成にもコストと時間がかかり、戦力になる前に離職するリスクも抱えています。
欧米では、足りないスタッフをプロジェクトの必要に応じて柔軟に増強する「Staff Augmentation(スタッフ・オーグメンテーション)」というサービスモデルが定着しているのをご存知でしょうか。
この記事では、IT開発の現場で注目を集めているStaff Augmentationについて、その意味や特徴、メリット・デメリット、活用方法などをわかりやすく解説します。エンジニアリソース不足でお困りの企業の方は、ぜひ参考にしてください。
近年、グローバルで広く採用されているStaff Augmentation(スタッフ・オーグメンテーション)は、企業が必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保するための戦略的なアプローチです。しかし日本の開発現場ではほとんど浸透していません。
Staff Augmentation(スタッフ増強) とは、企業がプロジェクトの一時的なリソース不足を補うために、必要なスキルや経験を持つ外部の専門家やエンジニアを雇用し、社内チームを強化するサービスや手法のことを指します。
従来の業務委託やアウトソーシングと異なり、Staff Augmentationでは外部人材を自社のチームに組み込み、プロジェクトマネージャーの直接の指示のもと、社内メンバーと同じように働いてもらいます。
特にIT業界では、必要なスキルを持つエンジニアを迅速に確保し、開発チームの能力を補強する手段として注目を集めています。
Staff Augmentationには以下のような特徴があります。
柔軟なリソース調整: プロジェクトの規模や必要なスキルセットに応じて、チーム編成を柔軟に拡大・縮小できます。
直接的なマネジメント: 外部人材とはいえ、自社のプロジェクトマネージャーが直接指示を出し、タスクを管理します。
期間の自由度: 短期のプロジェクトから長期の開発まで、必要な期間だけリソースを確保できます。
スキルの即戦力化: 必要なスキルセットを持つ人材をすぐにチームに組み込むことができます。
Staff Augmentation(人材の増強)が注目を集めている背景には、以下のような要因があります。
深刻化するIT人材不足 経済産業省の試算によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると言われています。多くの企業が人材確保に苦心する中、Staff Augmentationは有効な解決策の一つとして期待されています。
DXの加速 デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、一時的に特定のスキルを持つエンジニアが必要になるケースが増えています。人材の増強は、そうした一時的なスキル需要に柔軟に対応できます。
働き方の多様化 コロナ禍を経て、リモートワークが一般化し、物理的な場所に縛られない働き方が浸透してきました。これにより、グローバルな人材を活用するStaff Augmentationの実現可能性が高まっています。
コスト最適化のニーズ 正社員として採用すると固定費が増大しますが、Staff Augmentationでは必要な期間だけリソースを確保できるため、コストを最適化できます。
「人材増強サービス(Staff Augmentation)」は、現代の企業が直面する人材課題に対する効果的なソリューションとして、ますます重要性を増しています。
Staff Augmentationは、一見すると従来の開発委託やSES、ラボ型開発と似ているように見えます。しかし、それぞれのモデルには明確な違いがあります。ここでは、その違いを詳しく解説していきましょう。
請負開発は、開発の成果物に対して契約を結ぶ形態です。一方、Staff Augmentationは人材の提供に対して契約を結びます。
請負開発の特徴
仕様が明確に定められている
ベンダー側がプロジェクトマネジメントを行う
成果物の完成責任はベンダーにある
途中での仕様変更は契約変更が必要
Staff Augmentationの特徴
柔軟な仕様変更が可能
クライアント側でプロジェクトマネジメントを行う
成果に対する責任はクライアント側にある
アジャイル開発との相性が良い
SES(システムエンジニアリングサービス)は、エンジニアを派遣する形態ですが、Staff Augmentationとは以下のような違いがあります。
SESの特徴
エンジニアは客先常駐が基本
労働者派遣法の規制を受ける
期間制限がある(3年まで)
指揮命令系統に制約がある
Staff Augmentationの特徴
リモートワークが基本
業務委託契約で実施
期間の制約がない
より自由度の高いマネジメントが可能
ラボ型開発は、Staff Augmentationと同じ文脈で語られることが多いため、違いがよくわかりにくですが、以下のような違いがあります。
ラボ型開発の特徴
チーム単位での契約が基本
ベンダー側でチームを組成
開発拠点はベンダー側
プロジェクトマネジメントは両者で分担
Staff Augmentationの特徴
個人単位での契約も可能
クライアント側のチームに組み込む
開発場所は柔軟に設定可能
プロジェクトマネジメントはクライアント側が主導
つまり、ラボ型開発は「チーム」を中長期にわたって提供し、スタッフ増強では「個人単位」で「必要な期間」人材を提供するという違いがあります。
いずれの形態も、それぞれに長所と短所があり、プロジェクトの性質や目的によって最適な選択は異なります。スタッフ増強は特に
アジャイル開発
要件が流動的なプロジェクト
チームの技術力を補完したいケース
などで効果を発揮します。
また、これらの形態は相互に排他的なものではなく、プロジェクトの段階や要件に応じて組み合わせることも可能です。例えば、基幹システムの開発は請負で行いながら、新規機能の追加開発にスタッフ増強サービスを活用する、といった使い方もできます。
関連記事:ラボ型開発(ODC)とは?SESとの違いやメリットをわかりやすく解説!
スタッフ増強サービス(Staff Augmentation)には、従来の人材調達方法にはない独自のメリットがあります。ここでは、その主要なメリットを詳しく解説していきます。
リソース調達の柔軟性
コストを最適化できる
即戦力を確保できる
足りない技術だけ補完できる
Staff Augmentationの最大のメリットは、プロジェクトの状況に応じて柔軟にリソースを調整できることです。
スケーラビリティ
プロジェクトの規模に応じてチームを拡大・縮小が容易
繁忙期と閑散期に合わせた人員調整が可能
必要なスキルセットを持つエンジニアを必要な期間だけ確保
期間の自由度
1ヶ月単位などの短期契約から長期契約まで柔軟に対応可能
プロジェクトの進捗に応じて契約期間の調整が可能
正社員採用のような長期的なコミットメントが不要
人材リソースを必要な時に必要なだけ確保できることで、コストの最適化が図れます。
固定費の抑制
正社員雇用に伴う福利厚生費用が不要
オフィススペースや機材の追加コストを抑制
閑散期の人件費負担を軽減
採用コストの削減
採用活動にかかる時間とコストを節約
採用後の教育・研修コストを削減
ミスマッチによる採用失敗のリスクを回避
スタッフ増強サービスでは、即戦力となる人材をすぐにチームに組み込むことができます。
スピーディーな人材確保
採用プロセスを経ることなく、必要な人材をすぐに確保
プロジェクトの立ち上げ期間を短縮
急な人材ニーズにも対応可能
経験者の活用
特定の技術スタックに精通した経験者を確保
類似プロジェクトの経験者を優先的に選定
業界知識を持つ即戦力人材の活用
自社チームに不足している技術力を効果的に補完できます。
専門性の獲得
最新技術に詳しい専門家の知見を活用
特定の技術領域に特化したエキスパートを確保
社内には無い専門スキルの補完
技術力の向上
外部人材との協業を通じた社内エンジニアの技術力向上
新しい技術やベストプラクティスの導入
グローバルな開発手法やツールの習得
このように、Staff Augmentationは単なる人材リソースの確保以上の価値を提供します。特に、
スピーディーな開発体制の構築が必要な場合
技術力の強化が急務な場合
コスト効率の高い開発体制を目指す場合
柔軟なチーム編成が求められる場合
に大きな効果を発揮します。
ただし、これらのメリットを最大限に活かすためには、適切なマネジメント体制の構築が不可欠です。次のセクションでは、人材増強サービスの活用における課題やデメリットについて見ていきましょう。
Staff Augmentationには多くのメリットがある一方で、いくつかの課題やリスクも存在します。これらを事前に理解し、適切な対策を講じることが、成功への重要なカギとなります。
Staff Augmentationでは、プロジェクトマネジメントの責任が自社側にあるため、マネジメント面での負担が大きくなります。
マネジメント工数の増加
外部人材の業務管理や進捗管理に時間が必要
タスクの割り当てや優先順位付けの負担
チーム全体のスケジュール調整が複雑化
チームビルディングの課題
社内メンバーと外部人材の融合に時間がかかる
チームの一体感やモチベーション維持が難しい
企業文化や開発方針の共有に労力が必要
リモートワークが基本となるオフショアでのスタッフ増強では、コミュニケーションに関する様々な課題が発生します。
言語の壁
英語でのコミュニケーションが必要になることも
技術用語の認識の違いによる誤解
文書でのやり取りにおける微妙なニュアンスの伝達
時差への対応
オフショア人材の場合、時差による連絡の遅延
会議時間の調整が複雑
リアルタイムでの問題解決が難しい場合も
情報共有の複雑さ
プロジェクトの背景や文脈の共有が難しい
非公式なコミュニケーションの機会が少ない
ドキュメンテーションの重要性が増大
外部人材が自社の品質基準や開発プロセスを完全に理解し、それに従って開発を進めることは容易ではありません。
品質基準の統一
自社の品質基準の理解と徹底が難しい
コーディング規約やベストプラクティスの遵守
レビュープロセスの複雑化
セキュリティリスク
機密情報へのアクセス管理
セキュリティポリシーの徹底
知的財産権の保護
成果物の一貫性
開発スタイルの違いによる成果物のばらつき
ドキュメントの品質や形式の統一
保守性・可読性の確保
これらの課題に対しては、以下のような対策が有効です:
①明確なプロセスの確立
詳細な開発ガイドラインの整備
標準化されたコミュニケーションプロセスの導入
効果的なレビュー体制の構築
必要に応じて、ブリッジエンジニアやプロジェクトマネージャーを配置
②ツールの活用
プロジェクト管理ツールの適切な選定と活用
コミュニケーションツールの整備
品質管理ツールの導入
③段階的な導入
小規模なプロジェクトからの開始
成功事例の蓄積と展開
継続的な改善プロセスの確立
これらの課題は決して小さくありませんが、適切な対策と運用ノウハウの蓄積により、多くは解決可能です。重要なのは、これらの課題を事前に認識し、計画的に対策を講じていくことです。
欧米では一般的な人材活用手法として定着しているStaff Augmentationですが、日本での普及は限定的です。その背景には、日本特有のビジネス環境や文化的な要因が深く関わっています。
日本の商習慣は、取引における責任の所在と役割分担を明確にすることを重視します。この考え方は、システム開発の分野でも強く根付いています。
例えば、日本の開発プロジェクトでは、要件定義から設計、開発、テストまでの工程を一括で請け負うことが一般的です。これは、成果物の品質に対する責任をベンダー側が一元的に負う形態であり、発注側にとってはリスクとコストの予測が立てやすいというメリットがあります。
一方、Staff Augmentationは、開発の責任が発注側にあり、成果物の品質は発注側のマネジメント力に大きく依存します。この「責任の所在があいまい」と捉えられがちな形態は、日本企業にとって受け入れがたい要素となっています。
日本の雇用文化は、長期的な関係性を重視します。正社員を中心とした雇用形態が主流で、専門性の高い業務であっても、可能な限り自社で人材を育成していく傾向があります。
「必要な時に必要な人材を」という考え方に基づくStaff Augmentationは、この日本的な雇用観とは相反する面があります。特に、エンジニアのスキルやノウハウを自社の資産として蓄積したい企業にとって、外部人材への依存度を高めることへの抵抗感は強くなります。
Staff Augmentationでは、グローバル人材の活用が重要な選択肢となりますが、ここで大きな壁となるのが言語の問題です。
日本の開発現場では、仕様書や設計書、コメントなど、ほとんどすべてのドキュメントが日本語で作成されます。また、チーム内のコミュニケーションも日本語が基本です。この環境下で英語でのコミュニケーションを前提とするStaff Augmentationを導入することは、多くの企業にとって大きな挑戦となります。
さらに、日本の開発現場特有の「暗黙の了解」や「以心伝心」的なコミュニケーションスタイルは、海外人材との協働を難しくする要因となっています。例えば、詳細な仕様が文書化されていない部分を「空気を読んで」補完するような習慣は、グローバルな開発環境では通用しません。
日本のIT業界では、すでに請負開発やSESという確立された開発モデルが存在します。これらのモデルは、日本の商習慣や法制度に適合するよう長年かけて整備されてきました。
特にSESは、労働者派遣法という明確な法的枠組みの中で運用され、発注側とベンダー側の双方にとって、権利と義務が明確です。また、常駐を前提としたSESは、「Face to Face」のコミュニケーションを重視する日本の企業文化とも親和性が高いと言えます。
このように既存の手法が確立している中で、新たに一時的な人材増強を導入するインセンティブが働きにくい状況があります。多くの企業は、「うまくいっているものを変える必要はない」と考えがちです。そのため欧米では一般的なスタッフ増強サービスが日本市場では浸透していません。
ただし、この状況は徐々に変化しつつあります。以下のような要因が、IT人材増強サービスへの関心を高めています:
コロナ禍を経てリモートワークが一般化
IT人材不足の深刻化
グローバル競争の激化による開発スピードの要求
DX推進による新たな技術ニーズの発生
これまで見てきたように、Staff Augmentation(人材増強)は従来の開発委託やSESとは異なる、新しい人材活用の手法です。IT人材不足が深刻化する中、柔軟なリソース確保と技術力の補完を実現する有効な選択肢として、その重要性は増していくでしょう。
Rabiloo(ラビロー)は、IT人材不足の課題を深く理解し、日本企業のニーズに応えるIT人材増強サービスを提供しています。一時的な人員の増強から、中長期にわたる内製化を支援するチームでのラボ型開発への移行も柔軟に対応できます。
人材の採用や育成にかかるコストと時間を削減し、人材採用後の離職によるリスクも回避できます。
優秀な人材プール
エンジニアの85%がベトナム・ハノイ工科大学出身
国内最難関の工科大学で培われた高い技術力
日本語でのコミュニケーションが可能な人材が豊富
品質への強いこだわり
ISO9001、ISO27001の認証取得
ベトナム企業最速でCMMIレベル3を達成
厳格な品質管理プロセスの確立
充実したサポート体制
プロジェクト開始前の入念なスキルマッチング
効果的なオンボーディングプログラムの提供
日本人スタッフによるきめ細かなサポート
チームでの体制にも柔軟に対応
雇用の法的問題を完全サポート
労働契約と労働規約による雇用関係の保証
明確な給与体系とボーナス制度
適切な労務管理とコンプライアンスの徹底
RabilooのIT人材増強サービスの導入は、以下のステップで進めていきます:
①ニーズのヒアリング
必要なスキルセットの特定
プロジェクト規模と期間の確認
チーム体制の検討
②最適な人材の選定
スキル要件に合わせた候補者の選定
面談による適性確認
チームとのカルチャーフィット確認
③円滑な立ち上げ
開発環境の整備
効果的なオンボーディング
コミュニケーション体制の構築
IT人材の不足に悩む企業様、開発力の強化をお考えの企業様、ぜひRabilooにご相談ください。貴社の一時的な人員増強のニーズにお応えいたします。
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