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「AI開発って、具体的にどうやるんだろうか?」
「AIで業務改善ができるらしいけど、開発の具体的な進め方がわからない...」
「AIを導入したいけど、何から始めればいいのか分からなくて躊躇している...」
空前のAIブームの中、多くの企業がAI導入に関心を持っています。実際、経済産業省の調査によると、AI導入による2025年までの経済効果は最大11兆円と推計されており、特に小売業では需要予測やデータマーケティングの分野で大きな効果が期待されています。
しかし現状では、多くの企業が「AIとは何か、何ができるのかがわからない」という課題を抱えており、実に7割以上の企業がこの状況にあります。また、「現在のAI技術では目的達成が困難そう」「費用対効果がわからない」という声も4割を占めており、具体的な開発プロセスを理解できないまま導入を断念してしまうケースが少なくありません。
ソース:経済産業省 AI導入ガイドブック
特に、AI開発は従来のシステム開発とは異なる部分が多く、開発の進め方を誤ると、期待した効果が得られないケースも少なくありません。
この記事では、これからAI開発に取り組もうとしている方に向けて、以下の内容をわかりやすく解説します:
そもそもAI開発とは何をすることなのか
AI開発プロジェクトの具体的な進め方
プロジェクトを成功に導くために押さえるべきポイント
AI開発でよくある失敗パターンとその対策
需要予測や在庫の最適化、顧客の購買行動分析など、すでに効果が実証されている分野を中心に、具体的な事例を交えながら解説していきます。
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「AI開発」と聞くと、とても難しそうで手が出せないと感じる方も多いのではないでしょうか。
まず、AIとは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略で、人間の知的な判断や行動を、コンピュータで再現する技術のことです。例えば、お店での商品の売れ行きを予測したり、防犯カメラの映像から不審者を検知したり、膨大な顧客データから購買パターンを見つけ出したりといった、人間の基本的な判断をコンピュータで実現します。
そして「AI開発」とは、このAIの技術を使って、実際のビジネスの課題を解決するためのシステムを作ることです。
従来のシステム開発は、「商品の在庫が100個を下回ったら発注する」というように、あらかじめ決められたルールに基づいてプログラムを作ります。
一方、AI開発では、大量のデータを使ってコンピュータに「学習」させ、ルールを自動的に見つけ出します。たとえば「この商品は、気温が上がると売れやすい」「この商品を買う人は、次にこの商品も買う可能性が高い」といった、人間では気づきにくいパターンを発見し、それを予測や判断に活用します。
AI開発を成功させるには、主に以下の3つの要素が必要です:
明確な目的: AI開発では目的を明確にすることが最初の重要なステップとなります。「AIを導入したい」という漠然とした思いだけでは成功は望めません。 「売上予測で在庫を最適化したい」「来店客数の予測で人員配置を効率化したい」など、AIで何を実現したいのかを具体的に定めることが出発点となります。
質の高いデータ: AIは大量のデータから学習することで賢くなります。つまり、どれだけ良いデータを用意できるかが、AIの性能を大きく左右します。例えば売上予測であれば過去の売上データ、購買分析であればPOSデータなど、目的に応じた適切なデータが必要不可欠です。
現場との協力体制: 優れたAIを開発しても、現場で使ってもらえなければ意味がありません。AI開発では、実際に使う現場の方々の意見を取り入れ、日々の業務の中で本当に役立つシステムを作ることが重要です。例えば、売上予測AIを開発しても、その予測結果を在庫発注の担当者が使いやすい形で提供できなければ、せっかくのAIも活用されないままになってしまいます。このように、現場との密接な連携は、AI開発を成功に導くための重要な鍵となります。
このように、AI開発は決して特別なものではありません。必要な要素を理解し、適切なアプローチで進めることで、ビジネスに大きな価値をもたらすことができるのです。
実は私たちの身の回りには、すでに多くの場面でAIが活用されています。特に小売業では、POSデータや防犯カメラの映像など、日々大量のデータが蓄積されており、これらを活用したAI開発の成功事例が増えています。 ここでは、具体的にどのようなことができるのか、実例を交えながら見ていきましょう。
AIの代表的な活用例が、様々なデータを活用した需要予測です。
例えば、過去の売上データに加え、天候、気温、曜日、イベント情報など、様々なデータを組み合わせることで、商品の需要を予測し、在庫の最適化が可能になります。また、人員の稼働状況や機械の動作データから、必要な人員配置や設備のメンテナンス時期を予測することもできます。
このように、日々蓄積されるデータを活用することで、より効率的な業務運営が実現できます。
小売業での活用例:
売上データと気象データを組み合わせた需要予測
在庫の最適化による機会損失とコストの削減
発注業務の自動化による作業負担の軽減
製造業での活用例:
生産ラインの稼働予測
設備のメンテナンス時期の予測
不良品発生の予兆検知
店舗に設置された防犯カメラの映像をAIで分析することで、様々な業務改善が可能です。
例えば、店内の人の流れや混雑状況を分析し、最適なレジ配置や人員配置を行うことができます。また、商品棚の欠品状況を自動検知して補充のタイミングを把握したり、商品の陳列状態をチェックして適切な商品管理を行ったりすることも可能です。
さらに製造業では製品の外観検査を自動化し、不良品の検出精度を向上させることができます。また、建設業では建物や設備の劣化状況を自動で検知し、適切なタイミングでの補修・修繕を行うことができます。
防犯カメラの映像から不審者や危険な状況を自動検知するなど、セキュリティ面での活用も広がっています。
店舗での活用例:
混雑状況の分析による最適な人員配置
商品棚の欠品状況の自動検知
不審者の検知によるセキュリティ強化
製造現場での活用例:
製品の外観検査の自動化
作業者の安全確認
設備の異常検知
AI画像認識による業務改善について詳しくは「顔認識と顔認証の違いは?顔認識をマーケティングに活かす方法を紹介」という記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
請求書処理や問い合わせ対応など、定型的な業務もAIで効率化できます。
例えば、AIによる文字認識技術(OCR)を使って紙の請求書からデータを自動抽出したり、チャットボットで顧客からの問い合わせに24時間対応したりすることが可能です。人による対応が必要なケースを自動で判別し、適切な担当者に振り分けることもできます。
また、議事録作成や文書要約、翻訳など、文書作成業務の効率化にもAIを活用できます。
業務データの活用:
請求書処理の自動化(AI-OCR)
問い合わせ対応の自動化(チャットボット)
議事録作成や文書要約の効率化
AI-OCRについては「AI OCRとは?従来OCRと精度の違いと導入のメリットを解説」という記事をご覧ください。
POSデータやポイントカードのデータを分析することで、顧客の購買行動をより深く理解し、効果的な販促施策を打つことができます。
例えば、「この商品を買った人は次にどんな商品を買いそうか」という予測や、「どんな商品同士の組み合わせが多いか」といった分析が可能です。これにより、顧客一人一人に合わせたレコメンドやクーポン配布など、パーソナライズされたマーケティングを実現できます。
顧客データの活用:
購買パターンの分析
個々の顧客に合わせた販促施策
離反防止施策の実施
次に、これらのAI開発を実現するための具体的な進め方について、詳しく見ていきましょう。
AI開発は、「企画」「準備」「開発」「運用」の4つのフェーズで進んでいきます。それぞれのフェーズで何を行い、どんなことに気をつければよいのか、具体的に見ていきましょう。
AI開発の第一歩は、「なぜAIを導入するのか」という目的を明確にすることです。
ここで重要なのは、「AIを使うこと」自体が目的にならないようにすることです。例えば「売上を10%アップさせたい」「在庫コストを20%削減したい」など、具体的な経営課題とその解決によって得られる効果を明確にします。
また、このフェーズでは以下の点についても検討します:
開発に必要な予算と人員の見積もり
開発スケジュールの策定
成果を測定する指標の設定
AIの性能は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。準備フェーズでは、目的達成に必要なデータを特定し、収集する作業を行います。
例えば売上予測であれば:
過去の売上データ
商品のマスターデータ
気象データ
イベント情報 などが必要になります。
また、収集したデータの整理や、データの品質チェックなども、このフェーズで行います。
収集したデータを使って、実際にAIの開発を行うフェーズです。ここでは主に以下の作業を行います:
AIの手法(アルゴリズム)の選定
データを使ったAIの学習
AIの性能評価とチューニング
システムとしての実装
この段階で重要なのは、開発チームと現場担当者が密接に連携し、実用的なシステムを作り上げていくことです。
開発したAIを実際の業務で使用し、継続的に改善していくフェーズです。ここでは:
現場での利用状況のモニタリング
予測精度などの性能評価
必要に応じたAIの再学習
運用ルールの改善
といった作業を行います。
AIは一度開発して終わりではありません。実際の使用を通じて得られたフィードバックを基に、継続的に改善していくことが重要です。
これらのフェーズは、必ずしも一方通行ではありません。各フェーズで得られた知見を基に、前のフェーズに戻って検討し直すこともあります。大切なのは、各フェーズで何をすべきかを理解し、計画的に進めていくことです。
AI開発を成功に導くには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、プロジェクトを始める前に押さえておくべき要素を見ていきましょう。
AI開発で最も重要なのは、解決したい課題を明確にすることです。
「AIを使って何かできないか」という漠然としたスタートではなく、「在庫の廃棄ロスを半減させたい」「人手不足の製品検査を自動化したい」など、具体的な経営課題に紐づいた目標設定が必要です。
また、その課題がAIで解決できるものなのか、AIを使うことが最適な方法なのかを十分に検討することも大切です。場合によっては、従来型のシステム開発や業務改善の方が適している可能性もあります。
AI開発の成否を決める重要な要素が、データです。以下の点をしっかりと確認しましょう:
データの有無: 目的達成に必要なデータが自社に存在するか 存在しない場合、どのように収集できるか
データの品質: データに欠損や誤りはないか 十分な量のデータが確保できるか
データの鮮度: データは定期的に更新されているか 過去のデータは現在も有効か
AI開発は、技術者だけで進められるものではありません。以下のようなメンバーを含めた体制作りが重要です:
経営層: プロジェクトの意思決定と予算確保
現場担当者: 業務知識の提供と要件定義への参加
データ担当者: 必要なデータの収集と整備
開発チーム: AIの設計と実装
特に重要なのが、現場担当者の参加です。AIの開発結果を実際に使用するのは現場の方々です。開発の早い段階から現場の意見を取り入れることで、使い勝手の良いシステムを作ることができます。
プロジェクトをスムーズに進めるためには、これらのメンバーが密接にコミュニケーションを取れる環境を整えることが大切です。
AI技術の進化に伴い、多くの企業がAIを活用したサービスや製品の開発に取り組んでいます。しかし、その過程で予期しない失敗に直面することも少なくありません。ここでは、AI開発におけるよくある3つの失敗パターンと、それを防ぐための具体的な対策を解説します。
AIの性能は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。不十分なデータや偏ったデータを使用すると、AIモデルの精度が低下し、実運用に耐えない結果を生むことがあります。
失敗例:
売上予測AIを開発する際、過去の売上データが2~3ヶ月分しかなく、モデルの精度が低かった。
欠損値や異常値が多く含まれたデータを使用したため、AIの判断が不正確になった。
天候やキャンペーン情報など、売上に影響を与える外部要因データが欠如していた。
対策:
データ収集計画の策定: 最低でも1年以上のデータを確保し、季節変動なども考慮できるようにする。
データクレンジング: 欠損値や異常値を適切に処理し、データの品質を向上させる。
外部要因データの統合: 天候やイベント情報など、売上に影響を与える要因を特定し、必要なデータを計画的に収集する。
継続的なデータ更新: モデルの精度を維持するため、運用中も定期的に新しいデータを追加し、再学習を行う。
技術面だけを重視し、現場の業務フローや実際のニーズを考慮しないと、価値の低いシステムになってしまいます。
失敗例:
予測結果が出るまでに時間がかかりすぎて、発注業務に間に合わない。
AIの予測結果を現場のスタッフが理解・活用できない。
既存の業務システムと連携できず、二重入力が必要になる。
対策:
現場との密接な連携: 開発前に現場のヒアリングを徹底し、実際の業務フローやニーズを正確に把握する。
プロトタイプの早期検証: 最小限の機能を持つプロトタイプを早期に開発し、現場での試用を通じてフィードバックを収集する。
システム連携の要件確認: 既存の業務システムとの連携を考慮し、開発計画に組み込む。
ユーザー教育: 現場スタッフがAIの予測結果を理解し、活用できるよう、適切な教育とトレーニングを実施する。
AIシステムの開発は終わったものの、その後の運用がうまくいかないケースも多く見られます。
失敗例:
モデルが運用開始後に精度低下したが、適切なメンテナンスが行われなかった。
システムトラブルが発生した際に迅速な対応ができなかった。
新商品の追加や季節商品の入れ替えに対応できない。
対策:
専門チームの編成: データサイエンティストやエンジニアだけでなく、運用担当者を含むチームを編成する。
運用ポリシーの策定: モデルの更新頻度、評価基準、トラブル対応フローなどを事前に定める。
定期的な精度検証と再学習: モデルの精度を定期的に検証し、必要に応じて再学習を行うプロセスを確立する。
現場からのフィードバック収集: 現場からのフィードバックを収集・反映する仕組みを構築する。
教育とトレーニング: 運用担当者や現場スタッフに対して、AIの基本的な仕組みや操作方法を教育する。
AI開発では、計画段階から運用段階までさまざまな落とし穴があります。しかし、適切な対策を講じることでこれらの失敗を防ぎ、プロジェクトを成功に導くことが可能です。データの質と量、現場のニーズとの整合性、運用体制の整備を意識して、効果的なAI開発に取り組みましょう。
この記事では、AI開発の基本的な考え方から、具体的な進め方、そして失敗を防ぐためのポイントまで解説してきました。
AI開発プロジェクトを成功に導くために、以下の点を必ず押さえておきましょう:
AIは万能ではありません。まずは需要予測や在庫最適化など、効果が実証されている領域から始めることをお勧めします。
データの質と量が成功の鍵を握ります。プロジェクトを始める前に、必要なデータが十分に揃っているか確認しましょう。
現場の業務フローをしっかり理解し、運用体制を整えてからプロジェクトをスタートすることが重要です。
今、多くの企業がAI開発に取り組み始めていますが、最初から大規模なプロジェクトを目指す必要はありません。例えば、まずは単一の店舗で需要予測の実証実験を行い、その結果を見ながら他店舗に展開していく、といったアプローチが有効です。
小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体のAIリテラシーも向上していきます。そうして得られたノウハウは、次のプロジェクトにも必ず活きてきます。
弊社Rabiloo(ラビロー)は、小売業界向けのソリューションを数多く手がけてきました。特に画像認識技術を活用した店舗DXソリューションには定評があり、商品の欠品検知システムや棚割り分析、来店客数のカウントなど、店舗オペレーションの効率化を実現するソリューションを提供しています。 画像認識技術とAI開発の知見を活かし、お客様のビジネス課題に最適なソリューションをご提案させていただきます。まずはお気軽にご相談ください。
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