Share
「国内の開発会社を探したけど、予算や納期の条件が合わない...」
「国内で良い候補が見つからないので、オフショア開発に挑戦してみたい」
このような状況で、オフショア開発を検討される企業が増えています。実際、国内のIT人材不足を背景に、多くの企業がオフショア開発で開発リソースを確保しています。
しかし、初めてのオフショア開発では、
どのように進めていけばいいのか
どの国・地域の開発会社を選べばいいのか
どうすれば開発を成功させられるのか
など、不安や疑問も多いのではないでしょうか。
初めてオフショア開発に取り組む企業にとって、その進め方や手順は不透明で、失敗のリスクを懸念する声も多く聞かれます。
結論から言うと、オフショア開発を成功させるためには、準備段階からの計画的な進め方と効果的なコミュニケーションが重要なカギとなります。
実は、オフショア開発の失敗の多くは、技術力ではなくコミュニケーション不足が原因です。
それでこの記事では、国内で開発リソースが見つからない企業向けに、ベトナムオフショア開発事業を展開するRabiloo(ラビロー)が、オフショア開発の具体的な進め方と効果的なコミュニケーション方法を実践的な知見を交えながら解説します。
オフショア開発のベンダー選定の具体的な方法
見積もり依頼から契約までの進め方
開発を成功に導くためのプロジェクト管理方法
言語の壁を乗り越えるコミュニケーションの取り方
実際の開発フローと進行管理のポイント
オフショア開発を成功させるためには、しっかりとした社内調整と具体的な手順に沿った計画的な進め方が必要です。ここではオフショア開発を始める前の重要な準備から、実際の進め方までをステップバイステップで説明していきます。
オフショア開発を始める前に最も重要なのが、社内での調整です。IT部門だけでなく、経営層や関連部門を含めた全社的な体制を整える必要があります。
以下のポイントを押さえて社内調整を進めましょう:
経営層の巻き込み
プロジェクトの目的と期待効果の説明
予算の確保
リスクと対策の共有
関連部門との連携
要件定義に関わる部門の特定
各部門の役割と責任の明確化
スケジュールの調整
コミュニケーション体制の整備
時差を考慮した会議体の設計
コミュニケーションツールの選定
情報共有ルールの策定
オフショア開発を担当する部門と現場の間に温度差があると、プロジェクトの進行に支障をきたす可能性が高くなります。特に経営層の理解と支援は、予算確保や部門間調整の面で極めて重要です。
経営層を巻き込むことの大切さについては以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎【プロジェクトオーナー】とは?その役割が機能を果たすためにすべきこと
社内体制が整ったら、次は開発要件を明確にします。国内の開発と異なり、対面でのコミュニケーションが限られるため、要件の曖昧さは後々大きな問題になりかねません。
以下の点に注意して要件を整理しましょう:
ビジネス要件の明確化
システムで実現したい目的
期待される効果
予算や納期の制約条件
機能要件の具体化
必須機能と追加機能の切り分け
画面イメージやワイヤーフレーム
データ構造やシステム間連携
非機能要件の定義
パフォーマンス要件
セキュリティ要件
運用保守要件
特に重要なのは、要件をドキュメントとして残すことです。口頭での説明や認識合わせだけでは、確実な開発は望めません。また、このドキュメントは社内の関連部門全てで共有し、認識を合わせておくことが重要です。
要件が整理できたら、それをもとにベンダー選定を行います。後述しますが、RFI(Request For Information:情報提供依頼書)を送付し候補を絞り込みます。
この段階で最初に必要なのが、秘密保持契約(NDA)の締結です。
オフショア開発では、見積もり依頼の段階で自社の機密情報をベンダーと共有する必要があります。そのため、具体的な相談を始める前に必ずNDAを締結しましょう。
NDAにおける主な確認ポイント:
秘密情報の定義と範囲
情報管理の方法
契約期間と義務の存続期間
違反時の罰則規定
準拠法と管轄裁判所
NDAを締結後、以下のポイントに注意してベンダー選定を進めます。
この段階では以下のポイントに注意が必要です:
複数のベンダーに見積もり依頼を出す
技術力だけでなくコミュニケーション力も重視
日本語でのやり取りが可能かどうか確認
過去の類似案件の実績を確認
これらを盛り込んだRFP(提案依頼書)を作成し、見積もりと提案依頼を行います。
見積もり依頼の際は、Step2で作成した要件定義書を元に、できるだけ詳細な情報を提供しましょう。
ベンダーが決定したら、契約締結と開発体制の構築に移ります。以下の点について明確に合意しておく必要があります:
契約形態(ラボ契約か請負契約か)
開発スケジュール
成果物の定義
検収条件
知的財産権の帰属
また、この段階で以下の開発体制を確立します:
プロジェクトマネージャーの選定
ブリッジSEの確保
開発チームの編成
品質管理体制の構築
請負契約においては契約締結時に、一般的にプロジェクト開始前のリソース確保や準備費用として、全額の一定割合を支払います。
オフショア開発における支払いについては、国内でのシステム開発と同様の基本的な形式を採用しております。
弊社Rabilooでは、以下の2つの契約形態に応じた支払い方式をご用意しております:
請負契約(受託開発)の場合:
・契約締結時:開発費用総額の50%
・検収完了時:残金50% ※支払い条件は各ベンダーの規定により異なる場合がございます。
ラボ契約(準委任契約)の場合:
・毎月:稼働エンジニア数に応じた人月単価を請求 ・契約期間中、月次での定期支払いとなります。
開発を開始する前に、必ずキックオフミーティングを実施します。ここでは以下の内容を確認します:
プロジェクトの目的と目標の共有
開発スケジュールの確認
役割分担の明確化
コミュニケーション方法の確立
課題管理の方法の合意
開発が始まったら、定期的な進捗管理と品質管理が重要になります。具体的には以下の項目を実施します:
週次での進捗会議の開催
品質メトリクスの測定と評価
リスク管理とその対策
課題管理とフォローアップ
特に重要なのは、早期に問題を発見し対処することです。小さな問題でも放置すると、後々大きな影響を及ぼす可能性があります。
開発が完了したら、検収作業を実施し、その後の運用保守フェーズへの移行を適切に行う必要があります。
検収作業の実施
要件定義書との整合性確認
機能テストの実施と結果確認
非機能要件の達成度確認
必要に応じたフィードバックと修正依頼
検収完了の判断
検収基準の達成確認
関係者からの承認取得
検収完了書の発行
契約に基づく残金の支払い手続き ※受託開発の場合、着手時50%、検収後50%の支払いが一般的です。ラボ型では通常、月次での人月精算となります。
保証期間と運用保守フェーズへの移行
受託開発の場合
契約で定めた保証期間の開始(通常3~6ヶ月)
不具合発生時の対応体制の確認
保証期間終了後の有償保守契約の検討
ラボ型開発の場合
開発フェーズから運用保守フェーズへの体制移行
必要に応じたチーム規模の見直し
保守運用における役割分担の明確化
定例会議体制の見直し
特に重要なのは、検収後の保証期間や運用保守フェーズにおける責任範囲を事前に明確にしておくことです。受託開発の場合は保証期間内の対応範囲、ラボ型開発の場合は運用保守フェーズでの作業範囲について、開発ベンダーとしっかり合意しておく必要があります。
これら7つのステップを確実に実施することで、オフショア開発の成功確率を高めることができます。次のセクションでは、信頼できるベンダーの選び方について詳しく解説していきます。
オフショア開発の成否を分けるのは、プロジェクトに適したベンダーを選定できるかどうかにかかっています。ベンダー選定には様々な観点での比較検討が必要です。以下、選定の具体的な方法を解説します。
オフショア開発パートナーを探す際、まずは対象となる国・地域を絞り込む必要があります。主な対象国それぞれの特徴を見ていきましょう。
ベトナム
日本語でのコミュニケーションが可能な人材が多い
親日的な国民性で文化的な相性が良い
時差が2時間と小さく、リアルタイムでの業務が可能
エンジニアの単価は比較的安価(月額35-45万円程度)
国策としてIT人材育成に注力
政治的に安定しており、カントリーリスクが低い
インド
高度な技術力を持つエンジニアが豊富
基幹システムや大規模開発の実績が豊富
英語でのコミュニケーションが基本
時差が3.5時間とやや大きい
エンジニアの単価は上昇傾向(月額50-70万円程度)
プロジェクトマネジメント力が高い
フィリピン
英語力が高く、グローバル開発に適している
時差が1時間と小さい
エンジニアの単価は中程度(月額40-50万円程度)
欧米企業からの受注も多い
自然災害(台風)のリスクがある
中国
高度な技術力と豊富な開発実績
日本語対応可能な人材も多い
時差が1時間と小さい
エンジニアの単価は高騰(月額60-80万円以上)
カントリーリスクへの懸念
知的財産権保護の課題
バングラデシュ
エンジニアの単価が比較的安価
英語でのコミュニケーションが基本
時差が3時間とやや大きい
インフラ面での課題
IT人材の育成に力を入れている
欧米企業からの受注増加
これらの特徴を踏まえ、以下の観点から自社に適した国・地域を選定することが重要です:
コミュニケーション面での優先順位
日本語対応が必須なら:ベトナム、中国
英語での開発が可能なら:フィリピン、インド、バングラデシュ
開発案件の特性による選定
基幹系システム開発:インド、中国
Web・アプリケーション開発:ベトナム、フィリピン
AI・先端技術開発:中国、インド、ベトナム
予算規模による選定
コスト重視:ベトナム、バングラデシュ
技術力重視:中国、インド
現在の市場動向としては、中国の人件費高騰やカントリーリスクへの懸念から、ベトナムへの移行(チャイナプラスワン)が進んでいます。また、グローバル展開を見据えた企業では、フィリピンやインドの活用も増えています。
※オフショア開発でベトナム人気が高まっている理由については「オフショア開発するならベトナムをやっぱりおすすめする4つの理由」という記事をご覧ください。
ベンダーを探すには、以下のような方法があります:
オフショア開発の専門マッチングサービスの活用
無料で複数の見積もりを比較可能
実績のある企業が厳選されている
日本語での相談が可能
注意点を一言。これらのサービスによく出てくる「おすすめの〜」は鵜呑みにしない方が良いです。なぜなら、これらのマッチングサイトに掲載される企業は、基本的に高い広告料や掲載料を支払って、「オススメ枠を買っている」企業だからです。つまり、サイトに掲載されていない企業の中にも、技術力が高く信頼できる企業が数多く存在します。
展示会やセミナーへの参加
直接の対話が可能
開発実績や体制を詳しく確認できる
文化や雰囲気を把握できる
ITWeekやNexTech Weekなどは毎年定期的に開催されていて、多くのオフショア開発企業も出展しています。
NexTech Week2023の中ではベトナムオフショア企業が共同で出展するコーナーがあった
知人や取引先からの紹介
信頼性の高い情報が得られる
実際の開発経験に基づく評価を聞ける
スムーズな商談が期待できる
知人からの紹介でオフショアベンダーを選定された事例については以下の動画でご紹介しています。
ベンダーを比較検討する際は、まずRFI(Request For Information:情報提供依頼書)を作成・送付し、必要な情報を収集することから始めましょう。可能性のあるベンダーを50社ほどピックアップし、その中から10社ぐらいに絞り、RFIを送ります。
RFIでは、以下の項目を重点的に確認します:
基本的な企業情報
設立年数と企業規模
財務状況の健全性
取得している認証(ISO9001、ISO27001など)
日本法人の有無
グループ企業体制と主要取引先
開発体制
エンジニアの人数と技術レベル(スキルマトリクス)
ブリッジSEの質と数
プロジェクトマネージャーの経験と資格
品質管理体制と品質指標(KPI)
開発プロセスと方法論
ブリッジSEとは、日本語力(英語力)を活かして顧客企業とIT開発チームの間で通訳・調整を行う技術者です。ビジネス要件と技術の両方を理解し、オフショア開発プロジェクトを円滑に進める役割を担います。
開発実績
類似案件の開発経験(具体的な事例)
日本企業との取引実績と期間
顧客からの評価(可能な範囲でリファレンス)
継続取引の割合と理由
過去のプロジェクトでの課題と対応事例
コミュニケーション体制
日本語対応可能な人材の数と日本語レベル
コミュニケーションツールの整備状況
緊急時の対応体制と連絡フロー
時差対応の方針と実施体制
定例会議の実施方法
セキュリティ対策
情報セキュリティポリシーの整備状況
データ管理・バックアップ体制の詳細
セキュリティ事故の対応方針と体制
従業員の教育体制と実施頻度
リモートワーク時のセキュリティ対策
RFIの回答を受領後、各ベンダーの回答内容を精査し、必要に応じて追加質問や対面での説明を求めます。この過程で2-3社に絞り込んだ後、より詳細なRFP(提案依頼書: Request For Proposal)を送付し、具体的な提案と見積もりを依頼することをお勧めします。
最終的な選定では、表面的な単価の比較だけでなく、上記の項目を総合的に評価し、中長期的な視点で自社のプロジェクトに最適なパートナーを選定することが重要です。また、選定後も定期的に評価を行い、継続的な改善を図ることをお勧めします。
以上の選定プロセスを経て、候補となるベンダーを絞り込んだら、次のステップである見積もり依頼と契約締結に進みます。
オフショア開発の見積もり依頼と契約締結は、プロジェクトの成功を左右する重要なプロセスです。特に国をまたぐ取引となるため、国内開発以上に慎重な対応が必要です。
見積もり依頼の際は、以下の書類やドキュメントを用意します:
RFP(提案依頼書)の作成
依頼するプロジェクトの背景(解決したい課題)と目的
開発スコープと要件の概要
予算と納期の目安
技術要件とアーキテクチャ
体制や役割分担の希望
セキュリティ要件
RFP(Request for Proposal)とは、特定のプロジェクトや業務に対して詳細な提案を求める「提案依頼書」のことです。企業は、自社の要件や条件を明示し、それに基づいて提案内容(解決策、費用、スケジュールなど)をベンダーから受け取り、比較・選定を行います。
RFPの作成には時間と労力を要しますが、これは将来的なリスク回避への投資といえます。ドキュメント化された明確な要件定義がないままプロジェクトを進めると、認識の齟齬やスコープの混乱により、最終的には遥かに多くの時間とコストが必要になります。『急がば回れ』の精神で、しっかりとしたRFPを準備することが、プロジェクトの成功への最短ルートとなるのです。
要件定義書
機能要件の詳細
画面設計書やワイヤーフレーム
システム構成図
データモデル
スケジュール案
マイルストーン
各フェーズの想定期間
成果物の定義
検収条件
複数のベンダーから提出された見積もりは、以下の観点で比較検討します:
コスト面での比較
開発費用の総額
工数の妥当性
追加コストの有無
支払い条件
為替リスクの対応
体制面での比較
プロジェクトマネージャーの経験
ブリッジSEの質と数
開発チームの規模と技術力
バックアップ体制
提案内容の評価
要件の理解度
技術的な提案の質
リスク対策の具体性
実現性の判断
オフショア開発の契約締結時には以下の点を明確に定めることが重要です:
契約形態の選択
ラボ型契約
準委任契約として開発リソースを確保
月額固定の人月単価での精算
柔軟な要件変更が可能
プロジェクト管理は発注側の責任
請負契約
成果物に対する請負契約
要件が明確な場合に適している
固定価格での開発
品質保証の責任範囲が明確
ラボ契約について詳しくは「
エンジニアのラボ契約とは?請負契約・準委任契約との違いを解説!」という記事をご覧ください。
責任範囲の明確化
成果物の定義
各フェーズでの役割分担
検収条件と基準
契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の範囲
保守・運用フェーズの対応
知的財産権の取り扱い
著作権の帰属
ソースコードの所有権
開発環境やツールのライセンス
第三者の知的財産権の利用
トラブル時の対応
紛争解決の手順
準拠法と管轄裁判所
解約条件
損害賠償の範囲
情報セキュリティ
機密情報の定義
情報管理の方法
セキュリティ事故時の対応
従業員の守秘義務
契約書の作成においては、可能な限り日本の法律に基づいた契約とし、日本の裁判所を管轄裁判所とすることをお勧めします。また、契約書は必ず法務部門や専門家のレビューを受けることが重要です。
これらの項目を丁寧に確認し、明確な合意を形成することで、プロジェクトの円滑な進行と、万が一のトラブル時の適切な対応が可能となります。
プロジェクトの立ち上げ段階でのミスは、後々大きな問題となる可能性があります。特にオフショア開発では、言語や文化の違いもあり、国内開発以上に入念な準備と明確なルール作りが必要です。
キックオフミーティングは、プロジェクトの方向性を全員で共有する重要な機会です。以下の項目を確実に実施しましょう:
事前準備
キックオフミーティングを成功させるためには、徹底した準備が不可欠です。事前に以下の項目を確認・実施してください:
参加者の選定と日程調整
資料の事前共有
通訳の手配(必要な場合)
オンライン環境のテスト
アジェンダ(実施内容)
キックオフミーティングでは以下の項目を網羅的にカバーし、認識のズレを防ぎます:
プロジェクトの目的と背景の説明
開発スコープの確認
スケジュールの共有
品質基準の合意
リスクと対策の共有
質疑応答の時間確保
コミュニケーションルールの設定
ミーティング後のスムーズな進行を支えるため、以下のコミュニケーションルールを設定します:
定例会議の日程と参加者
報告フォーマットの確認
連絡手段と緊急時の対応
ドキュメント管理の方法
効果的な開発体制を構築するためには、以下の点に注意が必要です:
プロジェクト組織の設計
発注側とベンダー側の役割分担
意思決定プロセスの明確化
エスカレーションルートの設定
バックアップ体制の確保
必要な役割の明確化
プロジェクトマネージャー
ブリッジSE
アーキテクト
開発リーダー
テストリーダー
品質管理担当
開発環境の整備
開発ツールの選定
バージョン管理の方法
テスト環境の準備
セキュリティ対策の実施
アジャイル開発の場合
スプリント期間の設定(通常2-4週間)
デイリースクラムの実施方法
スプリントレビューの進め方
バックログの管理方法
ウォーターフォール開発の場合
各フェーズの作業内容の明確化
レビュープロセスの設計
品質管理方法の確立
進捗管理の方法
成果物管理のポイント
命名規則の統一
ドキュメントテンプレートの作成
品質基準の明確化
バージョン管理のルール
コミュニケーション計画
日次報告の実施
週次進捗会議の開催
月次報告会の設定
課題管理会議の実施
特に重要なのは、開発の早い段階で「小さな成功体験」を積み重ねることです。例えば:
まずは小規模な機能から着手
具体的な成果物を早期に作成
こまめなフィードバックの実施
課題の早期発見と対応
これにより、チーム間の信頼関係を構築し、スムーズな開発の基盤を作ることができます。また、開発中に発生した問題やリスクに対しては、以下の対応を心がけましょう:
問題の早期発見と報告
原因の分析と対策の立案
関係者への迅速な共有
再発防止策の実施
開発フローが軌道に乗ってきたら、次は効果的なコミュニケーション管理が重要になります。次のセクションでは、オフショア開発特有のコミュニケーション管理について解説していきます。
オフショア開発において、最も重要かつ難しいのがコミュニケーション管理です。実際、オフショア開発の失敗案件の多くはコミュニケーション不足に起因しています。
言語の壁や文化の違い、時差の問題など、さまざまな課題がありますが、以下のポイントを押さえることで必ず成功に導くことができます。
頻繁なコミュニケーション
メールやチャットの返信期限を明確に定め、必ず守る
週1回以上の定例ビデオ会議で顔を合わせる機会を確保
プロジェクト管理ツールを活用した日常的な情報共有
明確なコミュニケーション
「暗黙の了解」や「行間を読む」ことを期待しない
指示は必ず口頭と文面の両方で伝える
期待する成果物や期限を具体的に明示する
理解度の確認を必ず行う
ブリッジSEは単なる通訳ではなく、プロジェクト成功のカギを握る重要な役割を果たします。以下の具体的なタスクを通じて、発注側とオフショア開発チームの橋渡しを担います。
技術要件の解釈と伝達
発注側が求めるシステム要件や仕様をオフショア側の技術スタックや開発プロセスに適応させて翻訳します。
日本の発注者が「高い可用性」を要求している場合、オフショアチームに具体的な設計案(例:クラウド環境での負荷分散構成)として伝える。
文化的な違いの調整
発注側とオフショア開発チームの間で異なる仕事観や品質基準の認識を調整します。
発注者が求める厳密なドキュメント化に対し、オフショアチームが重視していない場合、その重要性を伝え、具体的なフォーマットを用意する。
コミュニケーション上の問題の早期発見と解決
チーム間のやり取りを監視し、曖昧な指示や認識のずれを早期に見つけ、解決策を提案します。
仕様書の一部が誤解されている兆候があれば、ミーティングを調整し、詳細を再確認して合意形成を行う。
ブリッジSEを効果的に活用することで、技術的なギャップや文化的な違いを克服し、プロジェクトをスムーズに進行させることが可能になります。
日本語が特殊であることをまず理解する
日本は「高コンテクスト文化」(文脈で通じる)である一方、多くの国は「低コンテクスト文化」(明示的な表現が必要)
あいまいな表現は意識的に避ける
「Yes」が必ずしも理解や同意を意味しない場合がある
時差対応の工夫
会議時間の適切な設定
非同期コミュニケーションを前提としたタスク分割
緊急時の連絡手段の確保
これらの要素を適切に管理し、発注者側もコミュニケーションスキルを磨きながら丁寧に意思疎通を図ることで、オフショア開発特有の課題を最小限に抑えることができます。
ちなみに日本とベトナムの時差はマイナス2時間です。ベトナムとの時差を考慮した働き方については【ベトナムと日本の時差】ハノイとホーチミンまでの飛行時間や時差ボケは?という記事をご覧ください。
プロジェクトを成功に導くには、指示を「はっきり」「具体的に」「わかりやすく」伝えることが不可欠です。たとえブリッジSEの日本語力が高くても、日本人同士のような曖昧な表現や行間を読むことを期待してはいけません。シンプルで的確な表現を心がけ、曖昧な言い回しは避けるようにしましょう。
具体的に何をして欲しいのか、してほしくないのか、いつまでに完成させるのかを、必ず口頭と文面の両方ではっきりと伝えましょう。
その際、図表やサンプルを活用した視覚的な説明を加えることで、より正確な理解を促すことができます。また、指示を出した後は、確実に意図が伝わったかどうかを確認する時間を必ず設けてください。
発注者自身がコミュニケーションスキルを磨き、丁寧に意思を通わせることで、オフショア開発における失敗の多くを未然に防ぐことができます。
オフショア開発の魅力は中長期にわたって自社に開発リソースを確保することです。
しかしオフショア開発を初めて行う企業にとって、いきなり大規模なラボ型開発を始めることは失敗のリスクが高くなります。
まずは小規模なプロジェクトから始めて、段階的に規模を拡大していく「スモールスタート」の手法をおすすめします。
スモールスタートで成功を積み重ねていくために、以下の手順を推奨します:
最初のプロジェクト選定
開発期間3ヶ月程度
予算規模300万円以下
要件が明確な案件
社内の重要度が比較的低い案件
失敗しても影響が限定的な案件
段階的な拡大計画
フェーズ1:小規模な請負開発での実績作り
フェーズ2:中規模案件での経験蓄積
フェーズ3:ラボ型開発への移行検討
フェーズ4:長期的な開発体制の確立
スモールスタートに適した案件の具体例:
WebサイトやLPの制作
要件が明確
短期間での成果確認が可能
リスクが限定的
社内システムの一部機能開発
既存システムへの影響が少ない
要件の説明が比較的容易
テスト環境での検証が可能
プロトタイプ開発
新規サービスの検証用
技術検証目的
アジャイル開発の試験導入
スモールスタートから本格的な開発体制への移行は以下のステップで進めます:
1.初期フェーズでの評価
コミュニケーションの質
技術力の実態
品質管理能力
プロジェクト管理力
コスト効果の検証
2.体制の段階的拡大
開発メンバーの増員
案件規模の拡大
責任範囲の拡大
契約形態の見直し
3.ラボ型開発への移行検討
専属チームの立ち上げ
中長期的な人材確保
柔軟な要員配置
技術ノウハウの蓄積
特に重要なのは、各ステップでの成功体験を確実に積み重ねることです。それにより、以下のような効果が期待できます:
社内でのオフショア開発への理解促進
開発ノウハウの段階的な蓄積
リスクの最小化
長期的なパートナーシップの構築
スモールスタートを通じて、自社に最適なオフショア開発の形を見つけ出し、確実な開発基盤を築いていくことが重要です。
弊社Rabilooでは、このようなスモールスタートからの段階的な開発体制の確立を支援しています。まずは小規模な案件からスタートし、実績を積み重ねながら、お客様の開発ニーズに合わせて最適な開発体制を構築していくことをお勧めしています。
この記事では、オフショア開発の進め方について、具体的なステップと注意点を解説してきました。
オフショア開発を成功させるためのポイントを改めて整理すると:
1.準備段階の重要性
社内での十分な合意形成
明確な要件定義の作成
適切なベンダー選定
2.確実な体制作り
プロジェクト体制の確立
コミュニケーション計画の策定
品質管理体制の整備
3.段階的なアプローチ
スモールスタートでの開始
成功体験の積み重ね
段階的な規模拡大
オフショア開発は、国内開発と比べて確かに難しい面もあります。しかし、この記事で解説した手順に従って慎重に進めることで、開発コストの削減だけでなく、中長期的な開発リソースの確保という観点でも、大きな効果が期待できます。
弊社Rabiloo(ラビロー)は、ベトナムを拠点とするグローバルテクノロジー企業として、お客様のビジネス成長を支援しています。
オフショア開発初挑戦の企業様でも安心して開発を進められるよう、以下のような特徴のあるサービスを提供しています:
スモールスタートからの段階的な開発支援
日本語でのスムーズなコミュニケーション
品質にこだわった開発プロセス
柔軟な契約形態の選択
まずはお気軽にご相談ください。貴社の事業成長に最適なオフショア開発の進め方について、ご提案させていただきます。
関連記事:
▶︎令和時代のベトナムラボ型開発の魅力とは?良いパートナー選びのコツ
Share