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中小企業のDXは何から始める?進め方を実際の成功事例をもとに解説!
DXに取り組まなければと思いながら、なかなか動き出せない。
そんな状態が続いていませんか?
調べれば情報はたくさん出てきます。
IT化との違い、推進体制、AI活用、2025年の崖。
でも読み終わっても、「で、うちは何をすればいいんだろう」という問いだけが残る。
予算にも人にも限りがある中で、大企業と同じやり方が当てはまるとは思えない…
中小企業基盤整備機構の調査でも、DXが必要だと感じながら取り組めていない中小企業は全体の約7割にのぼります。
しかし、動けないのは意欲の問題ではなく、DXの全体像が整理できていないから、最初の一歩が判断できない──多くの場合、原因はそこにあると考えています。
逆に言えば、全体像さえつかめれば、自社が今どの段階にいて、次にやるべきことは何かが見えてきます。
結論から言えば、中小企業のDXはデータ化→業務改善→価値創出の3段階で整理すると見通しが立ちます。
そして最初の一歩は、全社改革やAI導入ではなく、身近な1つの業務をデータ化するところから始まります。
Rabiloo(ラビロー)は鍼灸整骨院グループ「ほねごり」と8年、リラクゼーションサロン「もみ徳」と6年にわたり、中小企業のDXに現場レベルで伴走してきました。どちらも最初から大きな計画があったわけではありません。目の前の困りごとを1つ片づけるところから始めて、結果として会社の仕組みそのものが変わっていきました。
実際に成果を出した中小企業はどう取り組んだか
DXの進め方を3段階で整理する全体の地図
なぜ中小企業にもDXが必要なのか
DXとは何か──中小企業にとっての現実的な意味
まず、実際にDXで成果を出した2社の事例から見ていきます。「理論より先に、うちと同じような会社がどうやったかを知りたい」──そういう方にこそ読んでほしい記事です。
「事例より先に、具体的に何から手をつけるか知りたい」という方は、DXはスモールスタートで始めるへどうぞ。
実際にDXで成果を出した中小企業の事例
中小企業のDXはどう進み、どんな成果につながるのか。理論の話は後にして、まずRabilooが長期にわたって伴走してきた2社の事例を紹介します。
ほねごり(鍼灸整骨院グループ・54店舗)──8年かけて積み上げたDX
関東で54店舗を展開する鍼灸整骨院グループ「ほねごり」のDXは、会計の締め作業から始まりました。
【患者からの会計→締め→帳簿入力→入金】という一連の流れがすべて手作業で、現金の数え間違いが頻発していた。この作業をPOSレジと自動入金機に置き換えたのが最初の一歩です。
そこから8年をかけて、現場の課題に合わせたシステムを一つずつ積み上げていきました。
POSレジ・自動入金機(会計エラーの解消)
予約システム
事前問診票のデジタル化
デジタルサイネージ
社内SNS「WILLMate」
最初から全体の設計図があったわけではありません。1つ改善するたびに、次に解決すべき課題が見えてきた結果です。
阿部社長は「DXへの投資に迷いは全くない。やらないと生きていけないという、もう一択だった」と語っています。また、「現場からフィードバックを吸い上げて週次で改善するサイクルを回さないと定着しない」と指摘されており、導入後の改善を続けたからこそ、54店舗を支える仕組みになりました。
もみ徳(リラクゼーションサロン・13店舗)──6年間の段階的拡張
福岡で13店舗を展開するリラクゼーションサロン「もみ徳」のDXは、予約管理のデジタル化から始まりました。
アプリ導入前は約10年間、電話予約と紙の予約表で運営。現場では次のような問題が常態化していました。
スタッフが忙しい時間帯に「60分コース」しか案内せず、客単価が下がる
紙の予約表でスタッフ間の予約の取り合いが起き、人間関係のトラブルが絶えない
紙が何百枚、何千枚と溜まり、個人情報の管理にも負担がかかる
高社長がまず取り組んだのは予約アプリの開発でした。ただし最初から予約機能を入れたわけではなく、6年かけて段階的に拡張しています。
プッシュ通知(2019年)── 来店を促す広告ツールとしてスタート
ポイント機能 ── アプリを使い続ける理由を設計
ネット予約システム ── 予約管理のデジタル化で利用頻度が劇的に向上
スタッフ専用アプリ「もみみん」 ── 施術履歴の管理や予約状況の確認で運営を効率化
高社長は「途中で継ぎ足すのではなく、段階的に広げていった方がいい」と振り返っています。
成果は数字に表れています。
アプリでお客様が自分でメニューを選べるようになり、ロングコースの利用が3〜4割に増加
予約の自動割り当てでスタッフ間の不公平感が解消され、トラブルが激減
値上げ後にもかかわらず、客数は約2割増加
高社長は「アプリを出してから、自分は月に2〜3回しか店に行かない。皆さん自分たちで回している」と話しています。
→ もみ徳のDXの全体像はインタビュー記事で詳しくお読みいただけます。
【サロンDX事例】福岡13店舗の「もみ徳」が予約アプリで客数2割増を実現した舞台裏
2社に共通すること
業種も規模も異なる2社ですが、DXの進み方には共通点があります。
最初のテーマが1つに絞られていた。 ほねごりは「会計の締め作業」、もみ徳は「予約管理」
成果を数字で確認していた。 作業時間、ミス件数、客数、コース利用率など
経営者が関与を切らさなかった。 どちらも経営者自身がDXの優先順位を途中で下げなかった
導入後も改善を続けた。 一度入れて終わりではなく、現場の声を聞きながら修正を重ねた
そして何より、最初から全体像を描いていたわけではないということです。目の前の1つの課題を片づけ、次の課題が見え、また片づける。その繰り返しが、振り返ってみれば会社全体の変革になっていた──これが中小企業のDXの現実的な姿です。
関連記事:
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2社の事例から見える、中小企業DXの進め方──3段階の全体地図
ほねごりともみ徳の事例を振り返ると、どちらも同じ順番で進んでいることに気づきます。
最初にデータ化し、次に業務の流れを見直し、その結果として顧客体験や売上が変わった。
この流れを整理すると、中小企業のDXは3つの段階に分けて捉えることができます。
この図のように、中小企業のDXはSTEP1(データ化)→STEP2(プロセス改善)→STEP3(価値創出)の順に、階段を一段ずつ上がるように進みます。いきなり最上段を目指す必要はありません。今の自社がどの段階にいるかを確認し、次の一段に集中することが大切です。
STEP1:業務をデータ化する
最初の段階は、紙やExcelで管理している業務を、データとして扱える状態にすることです。
対象になるのは、手作業が多い業務、転記が発生している業務、特定の人しか対応できない業務などです。
こうした業務を1つ選んでデータ化するだけで、どこに手間がかかっているか、どこでミスが起きているかが見えるようになります。
見えないものは改善できません。だからこそ、DXの入口は派手な変革ではなく、地味でも確実な可視化です。
ほねごりが会計の締め作業から始めたのも、もみ徳が予約管理から始めたのも、まさにこのSTEP1です。
どの業務を最初に選ぶべきか、90日でどう進めるかといった実行面の詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。 → DXはスモールスタートで始める
STEP2:業務プロセスを見直す
データが整うと、次に見えてくるのは「そもそもこの業務の流れ自体に無駄がある」という発見です。
たとえば、同じ情報を3回入力していた作業を1回に減らせるかもしれない。承認フローに不要なステップがあるかもしれない。
STEP1で可視化されたデータをもとに、業務の流れそのものを再設計するのがこの段階です。
ここで重要なのは、現場の負担を増やさない設計にすることです。「今までの作業+新しい入力」ではなく、「今までの作業を置き換える形」にしなければ、現場には定着しません。
もみ徳の予約の自動割り当て機能は、まさにSTEP2の典型です。手動のローテーション管理をシステムに置き換えたことで、スタッフ間のトラブルが解消されました。
STEP3:価値創出へ広げる
蓄積されたデータを使って、顧客の傾向を把握する。サービスの質を上げる。経営判断のスピードを速める。効率化だけで終わらず、事業としての競争力を高めていくのがこの段階です。
もみ徳で客数が2割増加し、ほねごりが54店舗まで拡大できたのは、STEP1とSTEP2の積み重ねがSTEP3の成果として表れた結果です。
STEP3は最初から狙うものではなく、積み上げの結果として到達するものです。
なぜ段階を飛ばすと止まるのか
この3段階で大切なのは、順番を守ることです。
紙とExcelの現状から、いきなりAI活用やSTEP3の価値創出に飛ぼうとする企業は少なくありません。しかし土台となるSTEP1(データ化)とSTEP2(プロセス改善)を飛ばした橋は、途中で崩れます。正しい順番で小さく積み上げることが、結局は唯一の近道です。
そしてもう一つ大切なのは、DXは「STEP1→2→3」と一直線に進むものではないということです。1つの業務でデータ化と改善を行い、終われば次の業務へ移る。この小さなSTEP1とSTEP2の反復が何年も積み重なり、結果として会社全体を変革する「STEP3」へと到達する。ほねごりの8年、もみ徳の6年は、まさにこの積み重ねの軌跡です。
そもそも中小企業にDXが必要な理由
事例と進め方を見てきました。ここで改めて、なぜ中小企業にもDXが必要なのかを整理します。「うちはまだいい」と感じている方にこそ、読んでほしいセクションです。
人手不足と属人化が、経営のリスクになっている
中小企業の多くは、限られた人数で日々の業務を回しています。その中で、特定の担当者にしか分からない業務が自然と増えていきます。
見積書のフォーマットをあの人しか知らない
月末の集計作業はあの人がいないと回らない
こうした属人化は、担当者が休んだり退職したりした瞬間に業務が止まるリスクを抱えています。
これは「人が足りない」という問題だけではありません。業務が特定の人の頭の中にしかなく、データとして共有されていないことが根本の原因です。
DXの第一歩であるデータ化は、この属人化を解消する手段でもあります。
関連記事:
2025年の崖とは?どうなったのかを2026年時点でわかりやすく解説
データが分断されていると、判断が遅れる
紙の伝票、Excel、個人のメモ、口頭の申し送り。中小企業では、情報がさまざまな場所にバラバラに存在していることが珍しくありません。
この状態だと、経営者が何かを判断しようとしたときに、まず情報を集めるところから始めなければなりません。「先月の売上はどうだった?」という問いに即答できない。「あの顧客の対応履歴は?」と聞いても担当者に確認しないと分からない。特定の人が休めば、業務そのものが止まります。
DXの出発点は派手な変革ではありません。この図の右側のように、必要な情報に、必要なときにアクセスできる状態をつくることです。
効率化の先にある「競争力」の問題
人手不足の解消やデータの整理は、いわば守りの話です。しかしDXが本当に必要とされるのは、その先にあります。
業務が回るようになるだけでは、競合との差は生まれません。データを使って顧客の行動を理解し、サービスの質を上げ、意思決定を速くする。中小企業が限られたリソースの中で成長を続けるためには、効率化の先にある「データを使って経営の質を上げる」という視点が欠かせません。
中小企業基盤整備機構の調査でも、DXに取り組んだ中小企業の約8割が「成果が出ている」と回答しています。
DXは大企業だけのものではなく、取り組んだ企業から順に手応えを感じ始めているのが実情です。
中小企業には、DXを進めやすい特性がある
ここまで課題の話が続きましたが、見方を変えると、中小企業にはDXを進めやすい特性もあります。
まず、意思決定が速い。大企業では稟議を通すだけで数ヶ月かかることもありますが、中小企業なら経営者の判断で翌週から動けます。
次に、組織が小さい分、全体が見えやすい。どの業務に課題があるか、どこを変えれば効果が大きいかを、経営者自身が肌感覚で掴んでいます。
そして、小さく試して素早く軌道修正できる。うまくいかなければすぐにやり方を変えられる柔軟さは、中小企業ならではの強みです。
課題が大きいからこそDXが必要であり、身軽だからこそDXを進めやすい。
ほねごりともみ徳が実際にそれを証明しています。
DXとは何か──中小企業の視点で押さえておくこと
ここまで事例と進め方を見てきました。最後に、DXという言葉の意味を改めて整理しておきます。
DXの意味と、IT化・デジタル化との違い
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して事業やビジネスモデルそのものを変革し、競争力を高める取り組みです。
経済産業省も同様の定義を示しています。
ただし、この定義だけを聞くと「うちには関係ない」と感じる方も多いかもしれません。ビジネスモデルの変革と言われても、目の前にあるのは紙の伝票やExcelの管理表だからです。
ここで大切なのは、DXとIT化・デジタル化の違いを押さえておくことです。
IT化は、既存の業務をデジタルツールで効率化することです。たとえば手書きの勤怠表をクラウドの勤怠管理に置き換える。業務のやり方自体は変わりません。
DXは、その先にあります。データを活用して業務の流れそのものを見直し、最終的には顧客体験や意思決定の質を変えるところまでを含みます。
ほねごりやもみ徳の事例で見たように、最初の入口はIT化に近いデータ化から始まりますが、それを積み重ねた先に業務の変革、さらには事業の成長がある。この連続的なプロセス全体がDXです。
両者の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。 → DXとIT化の違いが分かる決定的な4つのポイント
関連記事:
中小企業のDXは「変革」の手前から始まる
定義だけを見ると、DXはどこか遠い話に感じます。でもこの記事で見てきたように、中小企業のDXはもっと地に足のついたところから始まります。
最初の入口は、紙やExcelで回している業務をデータとして扱える状態にすることです。最初から「ビジネスモデルの変革」を掲げる必要はありません。
中小企業にとってのDXは、最初から完成形を目指すものではなく、データ化を起点に積み上げていくものです。
中小企業のDXについてよくある質問
DXとIT化の違いは何ですか?
IT化は、既存の業務をデジタルツールで効率化することです。DXは、その先にある業務プロセスやビジネスモデルの変革まで含みます。ただし中小企業の場合、最初の入口はIT化に近いデータ化から始まることがほとんどです。まずデータ化し、そこから段階的にDXへ進むのが現実的な道筋です。
→ 詳しくはこちら:DXとIT化の違いが分かる決定的な4つのポイント
DXにはどのくらい費用がかかりますか?
一概には言えませんが、中小企業のDXは必ずしも大きな初期投資を必要としません。最初の一歩が「1つの業務をデータ化する」ことであれば、クラウドツールの月額費用や、小規模なシステム開発費用から始められます。重要なのは、費用の大きさよりも、自社の課題に合った対象を選ぶことです。
自社にDXが必要かどうか、どう判断すればいいですか?
次のような状態が1つでも当てはまるなら、DXを検討する価値があります。
特定の人が休むと回らなくなる業務がある
同じ情報を紙・Excel・別の台帳に何度も転記している
経営判断に必要な数字を集めるのに時間がかかる
現場のミスや抜け漏れが繰り返し発生している
逆に、これらに当てはまらない場合は、現時点で無理にDXに取り組む必要はありません。
外部パートナーに依頼すべきですか?自社で進めるべきですか?
どちらが正解ということはなく、自社の状況によります。社内にITに詳しい人材がいて、対象業務も明確であれば、自社主導で始められます。一方で、何から手をつけるか整理がついていない段階であれば、外部パートナーと一緒に課題を整理するところから始める方が、結果的に速く進むことが多いです。
大切なのは、外部に丸投げしないことです。DXは現場の業務を変える取り組みなので、自社の経営者や現場担当者が主体的に関わることが成功の前提になります。
DXは何から始めればいいですか?
まずは、手作業が多い・転記が発生している・属人化している・ミスが起きやすいといった特徴を持つ業務を1つ選び、それをデータ化するところから始めるのが最も現実的です。
最初の業務の選び方や、90日で成果を出すための具体的な進め方は、こちらの記事で詳しく解説しています。 → DXはスモールスタートで始める
自社のDXをどう始めるべきか迷っている方へ
この記事では、中小企業のDXの全体像を3段階の地図として整理しました。
全体像が見えたなら、あとは最初の一歩を踏み出すだけです。「もう少し調べてから」と思う気持ちも分かりますが、調べている間も課題は進行しています。
どの業務から着手すればいいか分からない
スモールスタートで始めたいが、最初のテーマの選び方に迷う
自社の進め方が合っているか、第三者の目で確認したい
こうした段階にいる方は、まず「自社はどの業務から始めるべきか」を整理するところが第一歩になります。
Rabilooでは、DXを大きな構想から語るのではなく、現場で前進できる単位まで分解し、着手テーマの整理から伴走しています。もみ徳とは6年、ほねごりとは8年にわたり、現場の課題に合わせたシステムを一つずつ積み上げてきました。
「うちの場合、何から始めるのがいいだろう」──その整理からお手伝いできます。お気軽にご相談ください。
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